『アジア「年金老人」買春ツアー 国境なき「性市場」』 羽田令子著
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昨日に引き続きタイの売春ネタ。
『闇の子供たち』つながりでもあるんですが、ちょと事情があってこの方面の資料をまとめて大人借りしちゃいましたので、もうしばらくこのネタ続くと思いますです。ごめんなさいまし。
ぐりが子どものころはタイやフィリピンに女の子を買いに行くといえば農協とか社員旅行だったんだけど、最近は定年退職された年金生活者の方々がよくいらっしゃるそーですね。あとはお医者さんとかお役所関係とか企業の役員研修とか、とりあえず金持ち。お金あるんならコストパフォーマンスにこだわる必要はなかろーと思うのですがー。それ以上のなんかがあるんでしょーね。アジア人セックスワーカーには。なんなんだかは知りませんけども。
それにしてもスゴイですね。勇気あるね。信じらんないよ。
だってさあ、タイのセックスワーカーの70〜80%はHIV陽性者なんだぜ?それなのに日本人客はこぞって「ナチュラルセックス=ナマ」を所望されるそーですよ?ナチュラルて。
ちなみにタイのセックスワーカーは平均して1日20人の客を取る。コンドームなしでの性交渉における感染率から計算すれば、だいたい顧客1名/10営業日の割合で感染させてるってことになるわね。
日本人は何を根拠にしてんのかしらんけど「北タイはアブナイけど南はダイジョーブ」とかおっしゃってるそーですけども、あのー、タイのセックスワーカーは大半が北部山岳地帯かミャンマー、ラオス、カンボジアか中国出身なんです。どこで営業してよーがリスクはおんなじ。
それとタイ国内には推定数百万人のHIV陽性者がいます(非公式)。危険なのはセックスワーカーだけじゃありません。街でナンパできる素人ギャルだって陽性者かもしれませんってこと。都市部じゃ「まいんち葬式で喪服ばっか着ててつまらん」なんちゅー人もいるくらいで、タイ人の6人にひとりが親族や友人など近しい人をエイズで亡くしてるそーだ。
タイに再三再四通ってた老人会のメンバーがまとまって亡くなったなんて噂があったり、エイズを発症して初めて感染が発覚する異性愛者がやたら増えているという日本。お年を召した陽性者を受け入れる特別養護老人ホームや長期医療施設も極端に不足してます(医療介護CBニュース:HIV感染者高齢化、受け入れ先確保に課題)。政府が発表しているHIV調査のデータもどこまで信用していいものやら〜。
タイトルは“「年金老人」買春ツアー”を謳ってるけど、実際にツアーについて触れてるのはごく一部で、ほとんどがタイの売春マーケットの実態のレポート。具体的にいうと、タイの売春マーケットにおける女の子=商品の流れについて書いてある。
タイは基本的に母系社会で性に対する感覚が寛容なため、売春という職業にあまり抵抗感がないらしい。タイ北部国境地域周辺の子どもは小学校を卒業するころになると競りにかけられ、親元を離れて各地の売春宿で歌や踊りやオシャレや接客を教えこまれ、一人前になれば都会やリゾート地の売春宿へ稼ぎに行く。儲けたい子はマレーシアや香港や台湾や日本に渡る。その大部分が行方不明になったり病気になったり死んだりしていても、3年も仕送りすれば家が建つほどの収入が見込めるとなれば多少の危険は厭わない。
20歳くらいで退職した彼女たちはピンプと呼ばれるスカウトになったり、結婚してフリーランスのセックスワーカーになる。成功した場合は故郷の親に家を建てて地元のお寺に寄進をし、自分は都会で美容院やレストランなどの飲食店を経営して暮す。
コースができ上がっている。良いも悪いも何もない、タイと周辺諸国の女性の生き方のひとつとして、売春という選択肢がしっかりと確立されているのだ。
このマーケットは単なる地下産業ではない。少女をスカウトするのは学校の教師や村長だったりするし、国境の検問では兵士に賄賂がたっぷり支払われる。赤線地帯を担当する警官はみかじめ料をとるし、郵便局員は出稼ぎ先から郵送された為替小切手を失敬してクルマを買ったり家を改装したりする。お寺は彼女たちの寄進で派手な建て替えを競いあう。日本から無事に帰って来た女の子はラブホそっくりなケバケバしい外装の家を建てて悦に入っている。山深い農村地帯にそんな家がズラズラ立ち並ぶ通りがあったりするそうだ。村の通りには若い女の子の姿がまったくない。みんな都会で売春やってるから。
つまりよーするに国全体が売春ビジネスにどっぷりと首まで浸かってるってワケです。それこそ良いも悪いも何もない。
しかしそれでイケイケウハウハだった時代もそうそう続かない。HIVの驚異的な蔓延と売春といっしょに国を汚染している麻薬が、出生率をしのぐ高さの死亡率につながっている。このままいけばタイという国はどうなってしまうのか。
著者はバンコク在住でこの本の取材ではミャンマー、ラオス、中国雲南省、果てはフランスまで取材している。
全体に非常にドライで読みやすい本だが、それだけにここに描かれた独特のタイの民族文化が、読み手によってどう受け止められるのか気になるところもかなりあった。
売春はセックスというサービスを買うのであって、文化や人格を買う商売ではない。けどそこを激しく勘違いしてるのがオトコとゆー奇妙な生き物だからねえ・・・。
タイのHIV/AIDS問題に取り組むNPO GINAのレポート
アジアの難民・少数民族・売春と闘う人々を支援するSTAのレポート タイの少女売春
関連レビュー:
『闇の子供たち』1/2
『子どものねだん―バンコク児童売春地獄の四年間』 マリー=フランス・ボッツ著
『アジアの子ども買春と日本』 アジアの児童買春阻止を訴える会(カスパル)編
『少女売買 インドに売られたネパールの少女たち』 長谷川まり子著
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昨日に引き続きタイの売春ネタ。
『闇の子供たち』つながりでもあるんですが、ちょと事情があってこの方面の資料をまとめて大人借りしちゃいましたので、もうしばらくこのネタ続くと思いますです。ごめんなさいまし。
ぐりが子どものころはタイやフィリピンに女の子を買いに行くといえば農協とか社員旅行だったんだけど、最近は定年退職された年金生活者の方々がよくいらっしゃるそーですね。あとはお医者さんとかお役所関係とか企業の役員研修とか、とりあえず金持ち。お金あるんならコストパフォーマンスにこだわる必要はなかろーと思うのですがー。それ以上のなんかがあるんでしょーね。アジア人セックスワーカーには。なんなんだかは知りませんけども。
それにしてもスゴイですね。勇気あるね。信じらんないよ。
だってさあ、タイのセックスワーカーの70〜80%はHIV陽性者なんだぜ?それなのに日本人客はこぞって「ナチュラルセックス=ナマ」を所望されるそーですよ?ナチュラルて。
ちなみにタイのセックスワーカーは平均して1日20人の客を取る。コンドームなしでの性交渉における感染率から計算すれば、だいたい顧客1名/10営業日の割合で感染させてるってことになるわね。
日本人は何を根拠にしてんのかしらんけど「北タイはアブナイけど南はダイジョーブ」とかおっしゃってるそーですけども、あのー、タイのセックスワーカーは大半が北部山岳地帯かミャンマー、ラオス、カンボジアか中国出身なんです。どこで営業してよーがリスクはおんなじ。
それとタイ国内には推定数百万人のHIV陽性者がいます(非公式)。危険なのはセックスワーカーだけじゃありません。街でナンパできる素人ギャルだって陽性者かもしれませんってこと。都市部じゃ「まいんち葬式で喪服ばっか着ててつまらん」なんちゅー人もいるくらいで、タイ人の6人にひとりが親族や友人など近しい人をエイズで亡くしてるそーだ。
タイに再三再四通ってた老人会のメンバーがまとまって亡くなったなんて噂があったり、エイズを発症して初めて感染が発覚する異性愛者がやたら増えているという日本。お年を召した陽性者を受け入れる特別養護老人ホームや長期医療施設も極端に不足してます(医療介護CBニュース:HIV感染者高齢化、受け入れ先確保に課題)。政府が発表しているHIV調査のデータもどこまで信用していいものやら〜。
タイトルは“「年金老人」買春ツアー”を謳ってるけど、実際にツアーについて触れてるのはごく一部で、ほとんどがタイの売春マーケットの実態のレポート。具体的にいうと、タイの売春マーケットにおける女の子=商品の流れについて書いてある。
タイは基本的に母系社会で性に対する感覚が寛容なため、売春という職業にあまり抵抗感がないらしい。タイ北部国境地域周辺の子どもは小学校を卒業するころになると競りにかけられ、親元を離れて各地の売春宿で歌や踊りやオシャレや接客を教えこまれ、一人前になれば都会やリゾート地の売春宿へ稼ぎに行く。儲けたい子はマレーシアや香港や台湾や日本に渡る。その大部分が行方不明になったり病気になったり死んだりしていても、3年も仕送りすれば家が建つほどの収入が見込めるとなれば多少の危険は厭わない。
20歳くらいで退職した彼女たちはピンプと呼ばれるスカウトになったり、結婚してフリーランスのセックスワーカーになる。成功した場合は故郷の親に家を建てて地元のお寺に寄進をし、自分は都会で美容院やレストランなどの飲食店を経営して暮す。
コースができ上がっている。良いも悪いも何もない、タイと周辺諸国の女性の生き方のひとつとして、売春という選択肢がしっかりと確立されているのだ。
このマーケットは単なる地下産業ではない。少女をスカウトするのは学校の教師や村長だったりするし、国境の検問では兵士に賄賂がたっぷり支払われる。赤線地帯を担当する警官はみかじめ料をとるし、郵便局員は出稼ぎ先から郵送された為替小切手を失敬してクルマを買ったり家を改装したりする。お寺は彼女たちの寄進で派手な建て替えを競いあう。日本から無事に帰って来た女の子はラブホそっくりなケバケバしい外装の家を建てて悦に入っている。山深い農村地帯にそんな家がズラズラ立ち並ぶ通りがあったりするそうだ。村の通りには若い女の子の姿がまったくない。みんな都会で売春やってるから。
つまりよーするに国全体が売春ビジネスにどっぷりと首まで浸かってるってワケです。それこそ良いも悪いも何もない。
しかしそれでイケイケウハウハだった時代もそうそう続かない。HIVの驚異的な蔓延と売春といっしょに国を汚染している麻薬が、出生率をしのぐ高さの死亡率につながっている。このままいけばタイという国はどうなってしまうのか。
著者はバンコク在住でこの本の取材ではミャンマー、ラオス、中国雲南省、果てはフランスまで取材している。
全体に非常にドライで読みやすい本だが、それだけにここに描かれた独特のタイの民族文化が、読み手によってどう受け止められるのか気になるところもかなりあった。
売春はセックスというサービスを買うのであって、文化や人格を買う商売ではない。けどそこを激しく勘違いしてるのがオトコとゆー奇妙な生き物だからねえ・・・。
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