OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スマートな情熱

2006-05-11 15:12:51 | Weblog

今日も、いろいろとドタバタやってます。スケジュールの狂い、思惑のハズレ、本末転倒……。ハレハレ~って雰囲気が充満していますので、これを聴いて、スカッとします――

Woodlore / Phil Woods (Prestige)

情熱のアルトサックスと言えば、フィル・ウッズとしか答えられません。この人は白人なんですが、モダンジャズを創生した黒人天才アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーに心酔し、独自のスタイルを身につけています。

ですから同じ白人でありながら、リー・コニッツ(as) やアート・ペッパー(as) あたりとは決定的に違う魅力があって、それはズバリ、ハードバップの烈しいウネリです。

とにかく1回聴いたらギョエッ、となる猛烈さがあり、尚且つ、スロー物では情熱の迸りというか、文学青年的な歯が浮くような心情吐露が聞かれるのです。それゆえに分かり易く、また若干クサイ芝居のようなところもあるのですが、本日の1枚はキャリア初期の演奏とあって、それが若さゆえの暴走と許される魅力盤です。

録音は1955年11月25日、メンバーはフィル・ウッズ(as)、ジョン・ウィリアムス(p)、テディ・コティック(b)、ニック・スタビュラス(ds) というワンホーン編成です――

A-1 Woodlore
 いきなりズバッと飛び出すフィル・ウッズが痛快なオリジナル曲です。最初は何だかはっきりしないメロディラインなんですが、タメと泣きのフレーズが適度に入っており、リズム隊が送り出す刺激的なビートにノセられたフィル・ウッズは快調です。
 そのスタイルはチャーリー・パーカー直系ですが、師匠ほどのドライブ感も、またエキセントリックな天才性は、もちろんありません。しかしウネリというか、独自の聴かせどころは完成されています。
 それとリズム隊の溌剌度が素晴らしく、ジョン・ウィリアムスのピアノはホレス・シルバー調で、なかなか楽しめます。

A-2 Falling In Love All Over Again
 ハリウッド映画みたいなスロー曲が、じっくりと演奏されます。ここでもリズム隊が素晴らしく、それゆえにフィル・ウッズも安心してアドリブに専念しているようです。それは若い情熱の迸り♪ ただし、こういう曲調に必要な和みが、やや足りないようです。

A-3 Be My Love
 アップテンポで魅惑のメロディが奏でられていく、そのテーマ部分だけでKO必死だと思います。なにしろリズム隊が作るイントロがまず、抜群ですからねぇ~♪
 で、アドリブパートではブレイクから静かに、少しずつ盛り上げていくフィル・ウッズが流石です。かなりアウトしたフレーズも交えながら、基本は歌心を大切にして吹きまくるのですから、大したもんだと素直に驚嘆です。ドラムスとの対決からラストテーマを変奏していくところにも、上手さ表れていますねっ♪

B-1 On A Slow Boat To China
 このアルバムの目玉演奏がこれです。溌剌としたジョン・ウィリアムスのイントロに導かれ、フィル・ウッズが素敵なテーマをジャズ魂満点に吹奏し、そのままアドリブに突っ込んでいく、そこからはもう、興奮と感動の大嵐です。
 あぁ、このメロディ展開の上手さ、猛烈なドライブ感、泣きのフレーズも交えながらフィル・ウッズの突進は止まることを知りません。とにかく素晴らしいアドリブ・フレーズが、これでもかと溢れ出ています。
 そしてもちろんリズム隊も秀逸で、ジョン・ウィリアムスの活き活きとしたピアノからはビバップ王道の響きが感じられますし、ベースもドラムスも心から楽しく躍動しているのでした。
 さらにラスト・テーマを変奏するフィル・ウッズは文句なし!
 ジャズ史的にはソニー・ロリンズ(ts) の名演があまりにも有名な曲ですが、負けていません。

B-2 Get Happy
 ノッケから大爆発している演奏です。素材はスタンダードなんですが、もうそれは文字通りに素材でしかありません。アドリブ命というモダンジャズの真髄に挑戦するフィル・ウッズとバンドの面々は、当に火の玉状態です! このエキセントリックな雰囲気は白人が演奏しているとは思えないほどですが、実は泥臭いところが無く、あくまでもスマートな鋭さが魅力です。
 それにしても、これだけのアップテンポで乱れもせずに素晴らしいフレーズを連発するフィル・ウッズには無条件降伏するしかありません! クライマックスのドラムスとの対決も強烈です。

B-3 Strollin' With Pam
 ラストに相応しいファンキー調のブルースです。
 おぉ、なかなか黒~いフレーズが飛び出しますねぇ♪ その実態は、もちろんチャーリー・パーカーのフレーズを借りているのですが、そのウネリと思わせぶりなところは、フィル・ウッズが後々まで十八番とする独自のノリです。
 このあたりは同じチャーリー・パーカー直系の黒人アルトサックス奏者のルー・ドナルドソンと比較して聴くと、尚一層、鮮明になると思います。個人的な感想としては、ルー・ドナルドソンは陽気な黒っぽさが強く、フィル・ウッズには何を吹いても温か味が感じられるのです。ちなみにフィル・ウッズには、その名もズバリの「ウォーム・ウッズ(Epic)」という名盤もあります。

ということで、これは断然B面がオススメです。ジャズ喫茶でリクエストする時には、ぜひっ!

また、現行CDにはオマケとして別テイクが収録されていますが、中では「On A Slow Boat To China」のテイク 1 に捨てがたい魅力があると思います。

コメント (2)
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