OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ハードバップ再び!

2006-05-21 18:47:07 | Weblog

本日は気持ち良く晴れましたですね♪ 実家から赴任地まで車で移動しても、まるっきり遊びに行くようなドライヴ感覚でした。

当然、車内の音楽はノリ重視の選曲♪ 定番のストーンズに始まって、ジミー・スミス、鈴木茂、ミーターズ、サンタナと繋いで、次に流したのが昨日ゲットしたばかりの、これです――

Sonny Stitt with Art Balkey & The Jazz Messengers (Sonet / Universal)

嬉しい復刻です!

オリジナル盤は1975年に発売され、当時は日本盤も出たという、ハードバップの隠れ名盤でした。もちろん局地的にジャズ喫茶の人気盤ともなりましたが、なにしろ当時はフュージョンが日の出の勢いでしたから、こういう作品は所謂「昔の名前で出ています」的な扱いでした。

またジャズ・メッセンジャーズそのものがナツメロバンドとしての扱いというか、実力派を揃えている割りには人気が落目の三度傘……。このアルバムにしても、ソニー・ステットという唯一無二の名人の名を借りたお手軽企画という先入観念が濃厚でした。

ところが内容は素晴らしい!

実は私はオリジナル盤を持っていたのですが、どういうわけか、ある時から、紛失状態で悔しい思いをしていました。ところが昨日、ネタ探しをしていた店頭で輸入盤CDを発見、ボーナストラックまで入っていたので、迷わず購入してきました。

そして結論からいうと、やっぱり素晴らしい! しかもリマスターも良好ということで、本日はそのCDをご紹介です。

録音は1975年5月16日、メンバーはビル・ハードマン(tp)、デイヴ・シュニッター(ts)、ウォルター・デイビス(p)、鈴木良雄(ds)、アート・ブレイキー(ds) というジャズ・メッセンジャーズに、特別参加としてソニー・ステット(ts) が加わっています――

01 Blues March
 初っ端からベタな選曲に、ちょっと……。と言うなかれ!
 もちろん気持ちは分かりますよ、私もそうでしたから……。
 しかし虚心坦懐に聴いてみると、アート・ブレイキーのドラムスにもキレがありますし、バンド全体の突進力も強烈です。
 そしてアドリブ先発のソニー・ステットが悠々自適のフレーズを積み重ねて流石ではありますが、正直言うと、それだけです。
 実はそれよりも素晴らしいのが、ジャズ・メッセンジャーズ本隊の熱演です。まずビル・ハードマンがベテランの味を示せば、続くデイヴ・シュニッターがダークな音色とハードなフレーズで迫ります。しかし愕いたことに、その山場でソニー・ステットが意味不明なチョッカイを出してソロ・パートを横取りするという、当にジャズの修羅場を現出させるのです。
 う~ん、ジャズは恐いです! このままデイヴ・シュニッターにアドリブを続けさせていたら自分が危ないとでも、ソニー・ステットは思ったんでしょうか? 確かにそういう部分があるのかもしれません……。

02 It Might As Well Be Spring / 春の如く
 ソニー・ステット一人舞台というスタンダードの解釈は、余裕でテーマを崩していきますが、あざとい部分が耳に残ります。それでもアドリブパートでは十八番のメジャー・スケールを多用して、安心感満点の吹奏を心がけているようです。
 このあたりは上手いけれども無難すぎて……、という天邪鬼な気持ちに襲われますが、いやいや、これがソニー・ステットだけの名人芸でしょう。

03 Birdlike
 ジャズ・メッセンジャーズOBのフレディ・ハバード(tp) が作った迫力のハードバップ曲を、いきなりアート・ブレイキーのドラムソロをイントロにして爆走させていくバンドの勢いが見事です。
 アドリブ先発はソニー・ステットで、相変わらず見事なキーワークが堪能出来ます。後半ではホーン陣による絡み&リフが襲い掛かってきますが、物ともせずに突進するという悠然たる自信は見事!
 続くビル・ハードマンもベテランの意地を聞かせてくれますし、デイヴ・シュニッターがハーブバップの真髄に挑戦! 正直言って、当時から過小評価組の代表のような存在でしたが、今聴くと、私にはエリック・アレキサンダー(ts) よりも魅力があります。
 演奏はこの後、ウォルター・デイビスのピアノから再びソニー・ステットにアドリブが受け継がれ、そのまんまラスト・テーマに傾れ込むという王道の展開ですが、全体にアート・ブレイキーのドラムスがパワーと繊細さを併せ持つ凄みを存分に発揮しています。
 ちなみにアナログ盤では、ここまでがA面でした。

04 I Can't Get Started / 言い出しかねて
 これもソニー・ステットの一人舞台で、お馴染みのスタンダード曲が素材になっていますが、リズム隊が物凄い煽りを演じています。
 演奏のテンポはミディアムでのテーマ吹奏があり、アドリブパートに入ってからテンポアップされていく常套手段が用いられているのですが、まず鈴木良雄のベースが執拗に絡みだし、アート・ブレイキーのドラムスがビシバシとキメを入れていくので、ウォルター・デイビスも黙ってはいられない雰囲気から、恐いコードで伴奏をつけていくのです。
 当然、ソニー・ステットは、それじゃ俺もやらしてもらうよっ! という覚悟で歌心を全開させてくれるのですから、名演にならないほうが不思議です。
 率直に言えば当たり前の演奏かもしれませんが、この作品が発売された当時はフュージョン・プームの真っ只中ということで、誰しもが忘れかけていた正統派4ビートのグルーヴが、ここには確かに生まれているのでした。

05 Ronnie's Dynamite Lady
 ソニー・ステットが抜けた純粋なジャズ・メッセンジャーズの演奏です。曲はウォルター・デイビスが作った、カッコ良いモード調のハードバップ! テーマ部分からアート・ブレイキーが大張り切りです。
 アドリブ先発のデイヴ・シュニッターはデクスター・ゴードンの後継者的な音色とフレーズに新しい感覚も盛り込んだ熱演で、リズム隊の強烈な煽りに負けていません。
 続くビル・ハードマンは最初っから諦めているような雰囲気もありますが、破綻の無い吹奏に撤し、ウォルター・デイビスにバントタッチ! するとこのピアニストが、作者である強みを活かして大暴れです♪
 もちろんその後には、アート・ブレイキーが怒涛のドラムソロを聞かせ、親分の貫禄を示すのでした。

06 In Walked Sonny
 アルバムの締めくくりはスロ~ブル~スで、鈴木良雄のベースが蠢いてテンポを設定、そこへウォルター・デイビスのゴスペル風なピアノが被り、アート・ブレイキーがナイヤガラ瀑布で斬り込んでくれば、もう最初から聴き手はジャズにどっぷりという展開が楽しめます。
 そしてソニー・ステットがお約束の泣きでブルース魂を発揮! 本当にこの人はメジャー・スケールがほとんどの演奏ですが、それでも泣いてしまうというツボを外さない、本当の名人だと思います。
 ビル・ハードマンもここではハスキーな音色を活かして好演ですし、デイヴ・シュニッターはダークな音色でブルース衝動を爆発させ、けっして大先輩のソニー・ステットに気後れしていません! あぁ、これぞハードバップです!

ということで、アナログ盤はここでお終いでしたが、今回の復刻CDには「Birdlike」と「Ronnie's Dynamite Lady」の別テイクが入っています。そしてこれがマスターテイクと比しても遜色の無い出来栄えで、それは当時のメッセンジャーズが如何に安定した実力者揃いだったかという証だと思います。

特に「Birdlike」におけるビル・ハードマンの溌剌度は本テイクを凌ぐ勢いがありますし、「Ronnie's Dynamite Lady」の荒っぽさも、逆に暴力的な魅力があります。

それとアルバム全体における鈴木良雄の地味な凄さは特筆ものです♪ 完全にリズム隊の要としてアート・ブレイキーやウォルター・デイビスをリードしている瞬間さえも感じられるのです。バンド全体に勢いがあるのも、この日本人ベーシストの存在ゆえだと思います。

繰り返しますが、今回の復刻はリマスターも秀逸なので、ついついボリュームを上げてしまうアルバムです。う~ん、こうなるとオリジナルジャケットじゃないのが、残念ではありますが!

コメント
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