OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ロリンズ+クラーク=ダブルソニー

2008-10-26 12:13:08 | Jazz

The Sound Of Sonny / Sonny Rollins (Riverside)

人生は「一期一会」と言われますが、最近は矢鱈にそれが自覚されるのも、私が齢を重ねたからでしょうか。ジャズという瞬間芸が好きなのも、実はそうしたところに魅力を感じているのかもしれません。

と、最初から独り善がりを書いてしまいましたが、このアルバムはソニー・ロリンズとソニー・クラークというモダンジャズでは抜群の人気者同士が、そのアルバムタイトルどおりに「一期一会」を演じています。

録音は1957年6月のニューヨーク、メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、パーシー・ヒース(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という、大変に好ましいワンホーン編成♪ ちなみにソニー・ロリンズは超絶の名盤「Saxophone Colossus (Prestige)」から約1年後、またソニー・クラークは西海岸からニューヨークへやって来たばかりの頃かと思われますから、ますます興味深々――

A-1 The Last Time I Saw Paris (1957年6月19日録音)
 と書きながら、初っ端はソニー・クラークが参加していないテナーサックスのトリオによる演奏で、リズム隊はポール・チェンバースとロイ・ヘインズがきっちりと務めています。
 そしてソニー・ロリンズが軽妙洒脱に素敵なメロディをフェイクし、緩急自在のアドリブを完璧に披露し、もちろんリズム隊とのコンビネーションも憎らしいほどにキマッています。
 わずか3分に満たないトラックですが、これには思わず歓喜して絶句♪

A-2 Just In Time (1957年6月11&12日録音)
 ここでいよいよソニー・クラークが登場♪
 曲はお馴染みの楽しいスタンダードですから、ソニー・ロリンズも思い切ったメロディフェイクから豪快なアドリブに繋げるという得意技を披露すれば、ソニー・クラークは絶妙の伴奏から胸キュンフレーズをたっぷり入れた「ソニクラ節」を全開させるのです。
 パーシー・ヒースとロイ・ヘインズも安定したリズムサポートですから、ソニー・ロリンズのブッ飛びフレーズにも動ずることなく、ハードバップ王道の楽しさが満喫出来るのでした。

A-3 Toot, Toot, Tootsie (1957年6月11&12日録音)
 一応は職業作家が書いたスタンダードみたいですが、このテーマのリズミックな展開は、ほとんどソニー・ロリンズのオリジナルの感じがします。もちろんアドリブパートは、これぞっ、という「ローリン節」の大洪水!
 ソニー・クラークもウキウキするような伴奏から小気味よくスイングするアドリブが痛快至極♪ ロイ・ヘインズも本領発揮のビシバシドラミングで場の雰囲気を盛り上げていますよ。
 う~ん、まさに「サウンド・オブ・ソニー」と納得!

A-4 What Is There To Say (1957年6月19日録音)
 さらにこれが素晴らしいバラード演奏♪
 曲はビル・エバンスやジョン・コルレーンも演じている、私が大好きなメロディということもありますが、この「ダブルソニー」のバージョンも最高に素敵です。
 まずソニー・クラークの小粋に夢見るイントロからグッと惹きつけられ、続いてソニー・ロリンズがゆったりとして大らかにテーマメロディを吹いてくれるんですから、本当にたまりません。ロイ・ヘインズのブラシも良い感じですし、ソニー・クラークは小粋な歌心が全開ですよ♪

A-5 Dearly Beloved (1957年6月11&12日録音)
 これもソニー・ロリンズとしか言いようのない名演で、ソフトなグルーヴを醸し出すリズム隊を従えて、怏々としたテナーサックスが横綱相撲です。粋な原曲メロディをそれ以上にフェイクしてしまう作曲=アドリブ能力の証明でしょうね。これにはフレッド・アステアも降参かもしれません。

B-1 Every Time We Say Boodbye (1957年6月11&12日録音)
 ジョン・コルトレーンの十八番という歌物スタンダードですが、ここでは快適なミディアムテンポで縦横無尽にスイングしまくるソニー・ロリンズ! もちろんこのバージョンがジョン・コルトレーンに先んじているわけですが、これを聴いてしまったら、誰だって別な表現を模索するしかないでしょう。
 う~ん、ジョン・コルトレーンがソプラノで演じたのは、この所為?
 まあ、それはそれとして、この流れるようにフレーズを繋げていく自然体の物凄さ! やっぱりソニー・ロリンズはアドリブ名人です。
 そして、待ってましたとばかりにアドリブに入ってくソニー・クラークも最高ですっ♪ ハードバップって、本当に良いですねぇ~~♪

B-2 Qutie (1957年6月11&12日録音)
 このアルバムでは1曲だけのソニー・ロリンズが書いたオリジナルで、堂々としてユーモラスなメロディと軽妙なノリが絶妙です。もちろんアドリブは典型的な「ローリン節」の連続です♪
 またパーシー・ヒースのペースソロも見事だと思います。

B-3 It Could Happen To You (1957年6月11&12日録音)
 有名スタンダード曲をソニー・ロリンズが完全な独り舞台で演じているというだけで、吃驚仰天! 初めて聴いた時は、途中からリズム隊が入ってくるものと信じきっていただけに、思わず唸りました。
 つまりその瞬間、ジャズ的な興奮を求めて緊張していた私に強烈な肩透かしをくらわしたソニー・ロリンズは、実は真っ向勝負だったんですねぇ~。
 やっぱり凄いと痛感です。

B-4 Mangoes (1957年6月11&12日録音)
 オーラスはラテンリズムとファンキービートの美しき融合みたいな楽しい演奏で、まずはリズム隊が秀逸です。
 そしてソニー・ロリンズが豪快無比、飄々として押しの強いフレーズを連発してくれますから、その場は完全にモダンジャズ天国♪ ソニー・クラークのファンキー度も高く、そこはかとない「泣き」を含んだ「ソニクラ節」は、やっぱり素敵です。それゆえに後半はバンド全体の剛球モードっぽい感じが面白いところかもしれません。

ということで、各曲の演奏時間がちょいと短い事もあって、「聴かず嫌い」になっているアルバムかもしれません。しかしソニー・ロリンズは快調そのもので、そのテナーサックスの魅力が存分に満喫出来ます。まさに典型的なソニー・ロリンズがここにあるのですねぇ~。

それとソニー・クラークの参加も大きな魅力で、なんとここが唯一の顔合わせというのが勿体無い限りです。ちなみに「Blues For Tomorrow」というオムニバス盤には、この時の残りから「Funky Hotel Blues」が1曲だけ収録されていますが、これがまた最高ですから、機会があれば、ぜひとも聴いて下さいませ。おそらく最近のCDにはボーナスで入っているでしょう。ファンキー至極なソニー・クラークも楽しめますよっ♪

しかしそれにしても、私はこのアルバムが大好きで愛聴しているんですが、世評はどうなんでしょう。ソニー・ロリンズには名演・名盤がどっさりありますから、この作品あたりは、そっとしておいて欲しい気もしているのでした。

コメント (2)
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