■Otis Redding In Person At The Whisky A Go Go (Atoc)
真にグレイトなソウルシンガーだったオーティス・レディングにサイケおやじが出会った時、その偉人は既に天国へ召されていました。
それは初めて「The Dock Of The Bay」を聴いた時からの運命でしたから、新録が出ないのなら後追いで楽しむ覚悟は決めたものの、当時は直ぐに全てを集めるなんてことは経済的な事情から出来るはずもなく、そこでベスト盤を楽しんでいたのですが、そんなある日の昭和47(1972)年、フィルムコンサートでオーティス・レディングのライプパフォーマンスに接したのも、また運命でした。
それは1967年に開催されたモンタレーフェスティバルでの歴史的なステージだったんですが、とにかく熱気と情熱に満ち溢れた歌とアクションには完全KOされましたですねぇ~♪
ちなみにフィルムコンサートとは文字通り、ロックやR&Bの洋楽スタアが歌って演じるフィルムを映写する催し物で、画面や音響は映画館と変わらないシステムが入れられていましたから、外タレのコンサートが今日ほど普通ではなかった昭和40年代には、レコード会社やファンクラブが主体となって盛んに行われていたのです。
もちろん有料と無料の区別とか、客層の良し悪し等々が当日の盛り上がりに大きく関係してくることは言わずもがな、例えばストーンズがメインになると、始まる前から酒で乱れて暴れる奴とかも多かったですし、女の子が多い時には鑑賞よりもナンパ目的の軟弱男が大勢集まり、今となっては、ある意味で顰蹙寸前のイベントだったかもしれませんね。
で、そこで「動くオーティス・レディング」に深く感動したサイケおやじは、ど~してもライプ盤が聴きたくなり、その帰り道、銀座にあったハンターという中古屋でゲットしたのが、本日ご紹介の1枚です。
A-1 I Can't Turn You Loose
A-2 Pain In My Heart
A-3 Just One More Day
A-4 Mr. Pitiful
A-5 Satisfaction
B-1 I'm Depending On You
B-2 Any Ole Way
B-3 These Arms Of Mine
B-4 Papa's Got A Brand New Bag
B-5 Pespect
ご存じのようにオーティス・レディングのライプ盤といえば、ブッカーT&MGs を従えた1967年録音の「イン・ヨーロッパ」が決定的な傑作とされていますが、こちらはそれ以前の1966年春頃のステージで、しかも自前のツアーバンドがバックですから、一般的な評価は低いとされています。
しかし私は先に聴いた所為もあるんでしょうが、相当にこちらが好きで、演目の安定度や面白さも日常的なところが結果オーライ♪♪~♪
今では有名になった躍動的なリフが最高の「I Can't Turn You Loose」では、例の「ガタッガタッ」と合の手を入れてシャウトしまくるオーティス・レディングの汗ダラダラの姿が目に浮かんできますし、そのラストから間髪を入れずにスローダウンし、グッとタメの効いたファンキーソウルなコブシを唸る「Pain In My Heart」への流れには、何度聴いても感涙させられます。
ちなみに、ここでのバックバンドはドラムス、ベース、ギターのシンプルなリズム隊にトランペットやサックス、トロンホーンのホーンセクションが5人という、なかなか現場主義で鍛えられたコンビネーションがオーティス・レディング持ち前の歌とアクションにジャストミート!
例えば無謀にもジェームス・ブラウンの十八番を演じた「Papa's Got A Brand New Bag」では、オリジナルの都会的なシャープさよりも、如何にも南部の熱風に茹だったようなイナタいノリが味わい深いですよ。
それと何時だったかキース・リチャーズが告白したとおり、「ストーンズよりはオーティスの方が好き」という証明が、ここでのライプバージョン「Satisfaction」じゃないでしょうか?
後年、一部で言われているような白人に迎合するオーティス・レディングというような部分が、このライプ盤ではそれほど感じられないのも高得点♪♪~♪
ただし近年出た未発表テイクまでも纏めたCDのプックレットには、そのあたりを覆すような文章や写真もありましたので、一概には……。
まあ、それはそれとして、ハリウッドにあったウイスキー・ア・ゴー・ゴーという、あまり大きくない小屋でのライプですから、一応はステレオ録音ながら、微妙に音が回りきったミックスが往年の雰囲気を強く感じさせます。
それと前述した集大成CDで明らかになったんですが、やっぱりこのアナログ盤LPに収録されたトラックの中には編集が施されたものが幾つかあります。しかしそれが絶妙の流れを作っていることは否定出来ません。
賛否両論のアルバムかもしれませんが、私は好きです。