■The Yes Album / Yes (Atlantic)
今日も蒸し暑く、朝から鬱陶しいですねぇ。
まあ、それは気候や湿度なんていう自然条件ばかりではなく、不景気やバカ政治、あるいは煮え切らない某協会、正義ぶったマスコミ等々の所為もあるんですが、そんな時こそ、本日ご紹介のアルバムのような、スカッと爽快な1枚が聴きたくなります。
それはデビューから3作目となる、イエスにとっては初めてのヒット盤♪♪~♪
A-1 Yours Is No Disgrace
A-2 Clap
A-3 Starship Trooper
a. Life Seeker
b. Disillusion
c. Wurm
B-1 I've Seen All Good People
a. Your Move
b. All Good People
B-2 A Venture
B-3 Perpetual Change
ご存じのとおり、このアルバムからはギタリストがピーター・バンクスからスティーヴ・ハウ(g,vo) に交代し、それゆえにイエスというグループが本来持っていた広範な音楽性が尚更に活かせるようになったとは、評論家の先生方やコアなファンからの常識的な見解になっていますが、確かにピーター・バンクスの正統派ロックジャズ系のプレイに比べ、もっと柔軟なスタイルとテクニックを併せ持つスティーヴ・ハウのギターが、このアルバムでは目立ちまくり!
また同時にジョン・アンダーソン(vo,per)、トニー・ケイ(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブラッフォード(ds,per,vib) の先輩メンバー達を立てることも疎かにせず、その充実したコンビネーションから確立されるバンドアンサンブルはスピード感とタイトなリズム感に溢れ、本当にスカッとさせられます。
それはA面ド頭の「Yours Is No Disgrace」からして、曲調やキメの使い方は明らかにピーター・バンクス時代を引き継いでいますが、多重録も使いながら披露されるスティーヴ・ハウのギターは、様々なジャンルに立脚する多彩なスタイルを場面に応じて弾き分けるという、なかなか頭脳的なものです。
なにより決定的に違うとサイケおやじが思うのは、ピーター・バンクスが汗だらだらの熱血スタイルだったのに対し、スティーヴ・ハウは冷静でスマート!?
ですからビル・ブラッフォードのドラミングは尚更にシャープさを増し、クリス・スクワイアのベースワークが暴虐を極めつつも、絶対にバンドとしての纏まりは崩れません。
またトニー・ケイのキーボードの些かイナタイ雰囲気が、ここではかえって効果的でしょう。つまり後のイエスには失われしまう絶妙の暖か味が、このアルバムを親しみ易くしたポイントじゃないでしょうか。
そのあたりは凝った組曲形式の「Starship Trooper」や「I've Seen All Good People」においてもなかなか効果的で、それゆえにその中の構成曲を編集し、「Life Seeker」と「Your Move」をシングル盤にカップリングしての発売もムベなるかな! 残念ながらヒットはしませんでしたが、それは時代が既にアルバム中心主義に以降していた1971年の事でしたし、結果的にアルバムそのものが各方面から絶賛され、売れまくったのですから、役割はきっとりと果たしたんじゃないでしょうか。
もちろん強い印象を残すのは演奏パートだけではなく、ジョン・アンダーソンの力強くて透明感がいっぱいのボーカル、また新加入のスティーヴ・ハウも最高の働きを聞かせるコーラスワークが、さらに進化していると思います。
中でも「Disillusion」はスティーヴ・ハウの高速フィンガービッキングだけをバックにアコースティックなコーラス&ハーモニーが冴えまくり♪♪~♪ これが如何にも英国風プログレの王道へと突き進む「Wurm」、そして最終盤の余韻は、なんとなく「マジカルミステリー」な展開となって、実にたまりませんねぇ~♪ というかスティーヴ・ハウのひとりギターバトルが「ジ・エンド」? いやはや、ニンマリですよ。
う~ん、もうこのあたりになるとイエスというグループが当時、新参者のスティーヴ・ハウを直ぐに信じ切っていた証なんでしょうか? それは特にスティーヴ・ハウの独り舞台というライプ録音の「Clap」をLP片面の流れの中で絶妙の場面展開に使っていることにも表れているようですが、それにしてもこのアコースティックギターのインストは凄すぎるテクニックとインスピレーションの賜物だと思います。
そしてB面は、これまで述べてきたことの集大成というか、美しいコーラスハーモニーと爽やかなアコースティックギターのイントロに導かれ、なんとも爽やかな曲メロが印象的な「I've Seen All Good People」は言わずもがな、トニー・ケイのハートウォームな資質が全開のピアノが良い味出しまくりという「A Venture」、以降のイエス全盛期の序曲とも言える「Perpetual Change」でのモザイク的な構成の美学が、スティーヴ・ハウの流麗なギターワークを水先案内人として繰り広げられるんですから、既に刻まれた歴史を知っていれば、尚更に楽しめると思います。
とにかく爽快無比なロックジャズ!
1960年代末にデビューしたバンドの中では、特にブルースロックっぽさが希薄だったにしろ、ここまで颯爽とした演奏を披露されると、そのアクの無さがイヤミになりかねない危険性もあるんですが、こんな蒸し暑い時期にはかえって効果的でしょう。
まあ、正直言えば、ベースとドラムスの存在感がデビュー盤やセカンドアルバムに比べるとイマイチ、引っ込んだ感じもするんですが、その分だけバンド全体の纏まりやオリジナル曲を中心に据えたグループとしての主張が明確になったように思います。
さらに如何にも1970年代ロック的な録音とステレオミックスが、良いんですよ♪♪~♪
ちなみに歌詞の内容は時代的に反戦や人間の普遍的な幸福、さらに宗教や宇宙観までも含んだ、些かの夢と現実のギャップを表現するべく狙ったものかもしれませんが、我々日本人にとっては、あまりピンッとくる世界ではなく、英語がそれほどリアルに伝わってこないところを大切にしながら、イエス特有のハーモニーコーラスやジョン・アンダーソンの透明感溢れる歌声を楽しめば、結果オーライじゃないでしょうか。
またイエスの中心人物と自任するクリス・スクワイアは、数多い自分達のアルバムの中で、この作品が一番好きだと公言し、実際、後々までのライプステージでは定番となる演目が多数入っているのも高得点♪♪~♪
つまりこれを突き詰めて楽しむことが、イエスのライプをさらに身近に感じる道だということでしょう。
蒸し暑さにはイエスが効く!?
その答えは……、ちょいとホラー映画っぽいジャケットが、邪魔しているのかもしれませんね。