■Summer Samba / Walter Wanderley (Verve / 日本グラモフォン)
オルガン=コテコテ、という公式が現在では一般的なってしまいましたが、サイケおやじがオルガンという楽器を最初に意識したのは小学校の音楽の時間であり、次いでビートルズの「Mr. Moonlight」、さらに本日ご紹介のワルター・ワンダレイが演じる「Summer Samba」でした。
おそらくは誰しも、一度は耳にしたことがあるメロディでしょう。
その爽やかに躍動するクールなオルガンは、所謂ボサノバのビートを従えていますが、同時にポップスとしても超一流の味わいは、ジャズだとかブラジル音楽だといかいう、マニアックな色分けよりも、その出来過ぎとも言えるメロディ優先主義のアドリブ、また曲メロそのものの素敵な魅力が僅か3分のシングル盤片面に凝縮されているんですねぇ~♪
これを優良ポップスと言わずして、ど~なりますか!?!
ちなみにワルター・ワンダレイはブラジル出身のキーボード奏者で、当然ながら母国での活動も華やかだったと思われますが、この「Summer Samba」は1966年5月にアメリカで吹きこまれたもので、バックにもアメリカのジャズ系ミュージシャンが参加しています。
ですから、商業主義が丸出しという批判もあるかもしれませんが、ポップスはそれが本来の姿でしょう。売れたものが優れているという結果が常識であり、しかし売れるものを作ることが至難という現実を忘れてはなりません。
ということで、この「Summer Samba」は昭和40年代の日本では商店街のBGMであり、ホテルのラウンジや洒落たお店のムードミュージックでもあり、また洋楽ヒットのエバーグリーンだったのです。また電子オルガンのデモ演奏でも定番曲だったことは言うまでもありません。
そしてオルガンとは本来、こういう爽やかな使われ方が自然と思っていたのが、当時の大半の日本人じゃなかったでしょうか。
しかし時代は同時にサイケデリックやハードロックのブームの中で、混濁した演出を担当するのが、例えばバニラ・ファッジのようなオルガンロックであり、またボブ・ディランの「Like A Rolling Stones」を決定的にロックさせていたのも、アル・クーパーが弾いたバカでっかい音のオルガンでした。もちろんその後に流行るエマーソン・レイク&パーマーやディープパープルでのキース・エマーソンやジョン・ロードの存在感の強さも、またしかりでしょう。
さらにモダンジャズではジミー・スミスという偉人も屹立しています。
ただし告白すれば、サイケおやじがそうした演奏に接したのは、ワルター・ワンダレイの「Summer Samba」が大好きになった後のことですから、そんな毒々しいオルガンの魅力は「もうひとつの」という感じ方でした。
賛否両論があることは承知しているつもりですが、コテコテばかりがオルガンの魅力では無いし、鬱陶しい梅雨時や真夏の太陽の下で聴けるオルガンって、ワルター・ワンダレィが一番だと思います。
と書きながら、このメタボなムードが充満したジャケットデザインは、苦笑……。