■あたなと二日いたい / 藤ユキ (日本ビクター)
体質的に酒に酔わないサイケおやじも、大量飲酒した翌日には何故か頭が重かったり、胸がムカムカしたりするという、所謂二日酔いの症状を呈することがあります。
結局、それだけ飲んでいる時には客観的に頭が冴えてしまうという嫌な癖も、肉体的には効いているということなのでしょうねぇ……。
ここ数日、いろいろとあった所為か、今朝はそんな状態だったんですが、それでも届いていたオークション落札のブツを開封してみれば、気分もそれなりにスッキリするんですから、趣味とはありがたい存在だと思います。
で、それが本日ご紹介のシングル盤で、歌っている藤ユキとは後のアン真理子!
そうです、昭和44(1969)年に歌謡フォークの名曲「悲しみは駈け足でやってくる」を大ヒットさせ、またそれ以前には歌謡ボサノバを演じていたユキとヒデの初代ユキ=佐藤由紀として活動していた履歴は、なかなか奥深いものがあります。
なにしろ、この「あなたと二日いたい」はジャケットからも一目瞭然、所謂お色気歌謡のコレクターズアイテムとして好事家には必須の1枚ですし、時系列的に考察すれば、「ユキとヒデ」から「アン真理子」に共通するアンニュイなモダン歌謡曲の流れの中間にあって、ちょいとストレートな陰湿さを滲ませた芸風の表出を、一重に「女の性」と決めつけては、贔屓の引き倒しでしょうか。
しかし、これが発売された昭和42(1967)年7月の我国は、まさに昭和元禄の真っ只中であり、退廃と爛熟が急上昇的に進行していた庶民生活と大衆文化の中においては、これがジャストミートの企画のひとつでもありました。
まあ、このあたりはリアルタイムで十代だったサイケおやじにすれば、既にエロスに飢えていた事を否定出来ない現実でもあり、エッチな雰囲気のお姉さまが大好きな性癖が、すっかり中年者となった今も継続しているとなれば、オミットすることは不可能です。
いつでも逢えない 人だから
逢えば逢ったで 別れがつらい
せめてあなたと 二日はいたい
そうした強くて一途な想いをネチネチと歌う藤ユキの節回しは、コケティッシュでもあり、また幾分の下品さが良い方向へと作用した感じとでも申しましょうか、ここまでやってしまうと、何か現代のロリ系着エロ作品にも通じるヤバさもあるんですが、どっこい、演じられているのは間違いなく大人のムード♪♪~♪
ちょいとズンドコな曲メロと洋楽系ビートの上手い使い方は、流石に浜口庫之助の作曲に寺岡真三のアレンジが冴えまくりですし、未練と性欲の見事な融合を綴った作詞が川内康範とくれば、これは名曲の決定版!
典型的な演歌よりのエレキ歌謡という仕上がりも好ましいところなんですが、しかし結果的にリアルタイムではヒットせず、所謂幻の名盤というか、隠れ人気盤として今日に伝えられたのです。
ただし正直に言えば、彼女の歌は決してジャストミートしていない雰囲気も感じられますし、「上手い」とは評価されないでしょう。
ところが、そうしたミスマッチこそが、この「あなたと二日いたい」の魅力のひとつかもしれないんですよねぇ~~♪
ということで、ジャケットの一部欠損が悔しいところではありますが、これも自分に与えられた幸福のひとつとして素直に受け取らなければ、バチアタリでしょう。
そこで皆様にも、ジャケットの素敵なムードを楽しんでいただければ幸いでございます。