■あの娘のレター / The Boxtops (Mala / 東芝)
リアルタイムでは、ピンッとこなくとも、後でジワジワと効いてくるのが音楽鑑賞の楽しみのひとつかと思います。
平たく言えば、流行っていた頃には???だった歌や演奏に対しての自分なりの理解度が進んだという事でしょうし、同時に自分の好みの変化も素直に認めざるをえないわけです。
例えば本日ご紹介の「あの娘のレター / The Letter」は1967年に全米のヒットチャートを揺るがした名曲であり、人種の壁を超越してR&B系のミュージシャンにはフェバリットカパーされているほどなんですが、肝心のオリジナルを演じているボックストップスは、ちょいとイケメン揃いの白人グループなんですから、サイケおやじにとっては洋楽雑誌で彼等の写真に接した瞬間の非常な違和感が忘れられません。
それは掲載ジャケ写の囲みショットでもご覧になれるとおり、如何にも典型的な当時の白人バンドの佇まいでありながら、中身はソリッドで泥臭い元祖ファンキーロックであり、リアルタイムで言えば、ご意見無用の立派なR&B!?!
ですから、イントロから打撃系のドラムスとシンコペイトしたベース、あるいはギターリフに続き、エグ味の強いボーカルが不穏な曲メロを歌う展開は、やはり時代的にサイケデリックなオルガンとストリングスの響きを伴い、アッという間に終ってしまうという、あぁ~、もっと聴いていたいなぁ~~♪
そんな物足りなさと欲求をリスナーから引き出してしまうんですよねぇ。
しかしそこには派手なギターソロの間奏とか、アタックの強いホーンセクションの彩りが無く、妙に甘~いコーラスハミングが出たりする、それはそれで流行の最先端ではありましたが、結果的に中途半端の誹りも免れない危うさが……?
ちなみにボックストップスのメンバーはアレックス・チルトン(vo)、ゲイリー・ティレー(g)、ジョン・エバンス(key)、ビル・カニンガム(b)、ダニー・スマイス(ds) というのが当時の顔ぶれで、一応は南部ソウルの中心地だったメンフィス出身という素地(?)が白人にしてはヘヴィなR&Bフィーリングに繋がっているようです。
しかし、であればこそ、既に述べたとおりに、この「あの娘のレター / The Letter」には秀逸なR&Bカパーが多く残され、例えば同じ白人でもジョー・コッカーのバージョンは畢生の名唱でしょう。
そして告白すると、サイケおやじが「あの娘のレター / The Letter」に目覚めたのは、そのジョー・コッカーのカパーを聴いてからであって、まさに痙攣するほどの熱気と情念に完全KOされた挙句、ようやくボックストップスのオリジナルバージョンが素直に楽しめるようになったのです。
掲載の私有盤が中古でのゲットである事も、皆様がご推察のとおりであって、何らの言い訳も出来ませんが、基本的に白人R&B=ブルーアイドソウルが好きなサイケおやじにとっては、何故に盲点だったのか、ちょいと自問自答するばかり……。
またメンバーのアレックス・チルトンが、これまた何故か1980年代後半からボックストップスを知らない若いミュージシャンによって支持され、急速に表舞台に復帰した如きの存在感を示したのも不思議???
実はボックストップスで所謂ドスの利いた声を披露した頃のアレックス・チルトンは、なんとっ! 十代後半であり、グループ解散後の1970年代にはビッグ・スター、なぁ~んていうシャレにならないB級バンドを組んでいた時期もあった事を思えば、隔世の感もあるわけですが、ひとつだけ流石と思わせるのは、常に固有のR&Bフィーリングを貫き通している点です。
もちろん、失礼ながら、1980年代以降は貧乏ミュージシャンとして暮らしていたのでしょうが、そういう頑固さを失わなかったところが、近年の再評価(?)に繋がったような気もしています。
さて、ところで本日はバレンタイデーという、なにか今日の我国では、その本質が何処にあるのか不明の行事が展開されていますが、サイケおやじは大嫌い!
だって、あの「義理チョコ」って、なんだっ!?
そんなもん、貰ってニヤけている奴の気がしれませんよ、実際。
まあ、サイケおやじも、それなりに貰ってから長い年月が経っているのですが、本当に欲しかった頃にはひとつも貰えず、すっかり中年者の現在に幾つも貰ったところで、その「お返し」が大変ですよ……。
そして、貰えるものならば、ど~せ、「義理」だとしても、ハートウォームな手紙でも添えて欲しいもんだと、我儘を心に抱いているのでした。
うむ、あの娘のレターが愛おしい!