■Otis Blue / Otis Redding Sings Soul (Volt)
世の中、有りそうで無いものは夥しいわけですが、音楽鑑賞に限って言えぱ、ハナからケツまで自分を満足させてくれるアルバムは滅多にありません。
それは例えばビートルズという巨星にしても、まあ、好みの問題もあるかもしれませんが、ひとつのLPの中には、ど~しても納得出来なかったり、???というトラックが絶対的にあるんですねぇ……。
しかし、本当に僅少ながらも、否、それゆえに「好み完全充足盤」に出会ってしまえば、まさに生涯を供にする事必定であり、本日ご紹介のアルバムはサイケおやじが死ぬまで聴いても飽きない1枚!
A-1 Ole Man Trouble
A-2 Respect
A-3 Change Is Gonna Come
A-4 Down In The Valley
A-5 I've Been Loving You Too Long
B-1 Shake
B-2 My Girl
B-3 Wonderful World
B-4 Rock Me Baby
B-5 Satisfaction
B-6 You Don't Miss Your Water
歌っているオーティス・レディングは説明不要、ディープソウルという枠を超越した黒人歌手絶頂のひとりですが、ご存じのとおり、不慮の事故により早世していますから、残された音源は本当に限られた時期のものです。
しかしそこから伝えられる歌は、文字通り「ソウル=魂」の塊であって、良くも悪くもグッと惹きつけられてしまう「別の何か」がサイケおやじには感じられるのですが、そこまでの理由づけをしなくとも、素直に聴けてしまう、聴かされてしまう「パワー」が、殊更このアルバムには満ちていると思いますし、言うまでも無く、それこそが永遠不滅の証じゃないでしょうか。
それは上記した収録演目のチョイスにも顕著で、歌われているのは決してオーティス・レディングのオリジナルヒットばかりでは無く、サム・クックでお馴染みの「Change Is Gonna Come」や「Shake」、テンプテーションズのメガヒットにして広く誰もが知っている「My Girl」、そしてB.B.キングの「Rock Me Baby」やウィリアム・ベルの「You Don't Miss Your Water」、さらにはソロモン・バークの「Down In The Valley」あたりの有名過ぎるブルースやR&Bのカパーに加え、なんとっ! 白人ロックバンドのストーズがリアルタイムでヒットさせていた「Satisfaction」までもを堂々とやってしまう根性の据わり方は半端ではありません。
実は今や歴史というアメリカにおける黒人公民権運動、あるいはベトナムに対する反戦運動等々の社会的動向が、このアルバム制作発売時の1965年にはひとつのピークであり、そういう意識の過剰な受け取られ方が黒人音楽の動向に何らかの影響を与えていたことは否定出来ません。
ただし優れたボーカリストは何を歌っても「自分」を表現する事に長けていますから、もちろんサイケおやじを含めた後追い鑑賞であるほど、質実共にそうした事象を代表する名曲「Change Is Gonna Come」にしても、非常にストレートな感動に浸れるように思います。
いゃ~、正直、サム・クックのオリジナルバージョンよりも百倍は好き♪♪~♪
と言い放ってしまえば、きっとお叱りは覚悟しておりますが、その意味でオーティス印の純正オリジナルソウルという「Respect」や「I've Been Loving You Too Long」は、また格別の素晴らしさで、何度聴いても血が騒ぎ、深い感動に震えてしまいます。
そして当然ながらアルバム全体の構成、配置された楽曲の流れの良さも絶品であり、特にA面ド頭がちょい聞きには地味~~な「Ole Man Trouble」という仕掛こそが流石!
もう、じっくりと歌われていく不穏な曲メロを彩るアレンジの素晴らしさ、そしてオーティス・レディング自作の強みが完全に表れたとしか言いようがないヘヴィソウルの真髄が、このアルバム全体への入り口に相応しいと思うばかりですよっ!
ちなみにバックの演奏はブッカーT(org,p)、スティーヴ・クロッパー(g)、ドナルド・ダック・ダン(b)、アル・ジャクソン(ds) という4人組によるブッカーTとMGs にフロイド・ニューマン(as,bs)、アンドリュー・ロウ(ts)、ウェイン・ジャクソン(tp) 等々で構成されたメンフィスホーンズ、そしてアイザック・ヘイズ(key) も助っ人参加という鉄壁の布陣による本家スタックスサウンドの決定版で、その粘りっ気とエグ味の効いたアタックのコンビネーションは、この時期特有の良さがたまりません♪♪~♪
オーティス・レディング自身も納得の歌唱表現が冴えまくりのトラックばかりで、これがつまらないと言われたら、ディープソウルの立つ瀬が無いのと同じでしょう。
とにかく有名曲のカバーバージョンが完全なるオーティス節になっている事だけでも、これは凄すぎる名盤と断言させていただきます。
ということで、例によって思い込みばっかりが優先した文章ではありますが、好きなものは好きという他はありません。
また、最後になりましたが、黒人ボーカル作品でありながら、ジャケットに白人美女の写真が使われている点については、これが如何にも当時の素晴らしき「しきたり」であって、告白すればサイケおやじは彼女の大ファン♪♪~♪
そして私有盤は最初、日本プレスの再発アナログLPを聴いていたんですが、一念発起してアメリカ盤をゲットしたところ、当然ながらカッティングレベルの高い音圧によって、さらに強靭なオーティス・レディングのソウルに完全KOされましたですねぇ~~♪
それでますます抜け出せない世界にどっぷりというわけです。