■The Best Of Cream (日本ポリドール)
ネットが無かった昭和の時代には、今の様に簡単に各種の情報が取れませんでしたから、勢い錯綜した真偽に振り回される事も少なくありませんでした。
例えばサイケおやじの周辺では、本日ご紹介の日本編集によるクリームのベスト盤LPが、一時はその対象として騒がれましたですねぇ。
A-1 Sunshine Of Your Love
A-2 World Of Pain / 苦しみの世界
A-3 Dance The Night Away / 夜通し踊ろう
A-4 We're Going Wrong / 間違いそうだ
A-5 Outside Woman Blues
A-6 Crossroads
B-1 White Room
B-2 Wrapping Paper / 包装紙
B-3 Born Under A Bad Sign / 悪い星の下に
B-4 Sweet Wine
B-5 Rollin' And Tublin'
B-6 Strange Brew
なんとっ! オーラスに収録の「Strange Brew」が、全くの別テイク!?!?
しかし、結論から言えば、それは全くのガセネタだったんですが、現在では皆様も良くご存じのとおり、この「Strange Brew」は本来「Lawdy Mama」という、クリーム解散後に発表されたスタジオアウトテイク曲を改作したものであり、そうした情報は既にファンの間では知られた事でした。
そして、その経緯が様々な尾ヒレと共に流布される時、クリームが真のスーパーグループとして決定的な名声を得る証明作品としての2ndアルバム「カラフル・クリーム / Disraell Gears」が、後にマウンテンを結成するフェリックス・パパラルディという天才によってプロデュースされたという実態は極めて重要であり、1967年5月に行われたニューヨークでのレコーディングセッションこそが、新しいロックを確立させた現場のひとつでありました。
で、それは最初、実質的にはクリームによるセルフプロデュースとしてスタートし、問題の「Lawdy Mama」は古いブルースをエリック・クラプトンがアレンジしたものだったんですが、結果的に頓挫したマテリアルをレコーディングエンジニアとして参加していたフェリックス・パパラルディが補作加工し、見事に「Strange Brew」へ変身させたと言われています。
もちろん、その手腕からフェリックス・パパラルディは正式にクリームのプロデューサーに昇格するわけですが、その過程で作られた「Lawdy Mama ~ Strange Brew」の幾つかのバージョンがあるという現実の真相は!?!?
まあ、このあたりは10年ほど前に出たクリームの4枚組CDセットに「version 1」という肩書きで最初期の「Lawdy Mama」が登場し、これまでアルバム「ライブ・クリーム / Live Cream」にオマケ的に収録されていたテイクが「version 2」に改称された事により、その秘密の一端が明かされたわけですが……。
さて、ここで問題となるのが、ど~して本日ご紹介のLPにそうした逸話がデマとして紛れ込んだのか!?
その点は、なかなか意味深じゃないでしょうか……?
ちなみにサイケおやじが、このデマに惑わされたのは、どうやら中古屋巡りをしている仲間からの情報であって、結果的にそれまでは見向きもしなかったブツを探すという、ある意味では「ひとつのお楽しみ」が生まれたのですから、一概に怒るわけにもいきません。
ということで、本日書いたのと似たような思い込みや勘違いは他にも多々ありまして、そんなところも、また中古盤漁りの醍醐味(?)というわけです。
そして実際にアッと驚く新発見も、きっちり出てくるんですよねぇ~♪
例えば、このクリームのベスト盤LPであれば、本来がバラバラだった音圧等々を調正するためでしょうか、オリジナルバージョンよりは全体的にエコーが強くなっていたり、あるいは日本盤特有の幾分モコモコした音質がそれと相まって、妙にサイケデリック風味が濃くなっていたりと、ミョウチキリンな鑑賞フィーリングがあるように思います。
いやはや、これだからレコード集めは止められませんよっ!