■私のビートルズ / 常田富士男 (日本コロムビア)
先日の来日公演では既に70歳を越えて、それでも長丁場のステージをやってしまったポール・マッカートニーに脱帽するしかないサイケおやじではありますが、それもこれも「ビートルズ」という神話を我々に伝え得る最良の人物なればこそっ!
心底、尊敬に値するのがポール・マッカートニーの現在進行形でしょう。
そして同じ時代の空の下に生きて、多かれ少なかれ、ビートルズに何らかの影響を受けた者ではあれば、其々に私的な想いが募るはずです。
そこで本日ご紹介するのは、昭和45(1975)年にアングラヒットした和製サイケデリックロック「私のビートルズ」であります。
演じている常田富士男は「まんが日本昔ばなし」の語り&ナレーションで超有名な俳優であり、また実写の世界の個性的な名わき役としても、映画やテレビドラマ、バラエティ番組等々で幅広く活躍している実績は説明不要と思います。
ですから、掲載のシングル盤を出してしまったのも、リアルタイムの昭和元禄を体現した虚無と偏向した熱情による演技が時代にアクセスしていた証であり、実際にサイケおやじは、ラジオから流れた「私のビートルズ」を最初に聴いた瞬間の戸惑いと衝撃が、あまりにも大きすぎて、放心させられましたですよ。
まずは、なにしろ歌詞が意味不明!
ハゲ山の ハゲタカが
私を少し齧ったから
ハッシッシ ハッシッシ ハッシッシをあげたのさぁ~
夢見る旅ぃ~~~
薔薇の花をベッドに敷き詰めて
ジョンとポールが愛し合っている
羽の生えたトイレに跨って
空を ヨーコが
一人飛んでいる
なぁ~んて調子が徹頭徹尾なんですからねぇ~~~!?
繰り返しますが、昭和元禄爛熟期のリアルタイムでさえ、アブナイ感じとトリップ当然みたいな歌詞の中身は、極北でありましたから、現代のお若い皆様にはラリルレロどころの話じゃ~ないかもしれません。
しかも演奏パートがドロドロのハードロックと疑似プログレで煮詰められ、その濁ったキメが当たり前のファズギター!?
もはやサイケおやじの稚拙な筆など無用の長物であり、これは実際に聴いていただくのが最良ではありますが、驚くなかれ、制作スタップを確認してみれば作詞:吉岡オサム、作曲:神津善行、そして編曲:佐々永治のクレジットには目を疑うほどです。
そして当然ながら、常田富士男ならではの、素っトボケた語り口による節回しは不滅でしょう。
全くジャケ写のイメージどおりに放浪しては、その日暮らしにトリップすることが許されていた時代という事なんでしょうかねぇ~~??
何れにしても、これほどヒットしたカルトな楽曲もないほどで、その頃のラジオ深夜放送では、爆発的な人気を集めていたと記憶しています。
ということで、ビートルズは何時だって素敵だと思いますが、どうにも今の季節にはシンドイ気分も隠せません。
もちろん、あの悲劇を現実として受け止めることこそが、ファンの本当の務めなのでしょう。
でもねぇ……、無理してしまうのも、性分には合いません。
気が向けば、ビートルズを想う、そんなところが、私のビートルズかと。