■夜明けのハレルヤ / いとのりかずこ (キングレコード)
アルトボイスの女性シンガーが好きなサイケおやじが、いとのりかずこのファンになるのも自然の理ということで、掲載したのは、その彼女が昭和46(1971)年11月に出した人気曲「夜明けのハレルヤ」をA面に入れたシングル盤です。
いとのりかずこは、失礼ながら、決して大ブレイクした歌手では無かったんですが、昭和40年代後半には、特にラジオの深夜放送では彼女のレコードがオンエアされる事が多かったという存在で、ジャンルとしては演歌系ソウル歌謡~正統派盛り場演歌まで、幅広く歌える実力があり、当然ながらルーツにはロックの他に民謡や洋楽系大衆音楽の素養さえ、個人的には感じさせられてしまうほどなんですが、実はいとのりかずこは昭和41(1966)年にGSのガールバンドでは今もカルトな注目を集めるピンキー・チックスのボーカリストとしてレコードデビューしていたという履歴があり、その時は糸乗美和と名乗っておりました。
尤も、そのピンキー・チックスはGSブームに乗っかってのメジャーデビューであり、本来はダンサーのチームだったと云われているとおり、テレビ出演時には演奏よりも踊って歌うグループみたいな記憶がサイケおやじには残っておりますし、当時の松竹や大映で作られていたプログラムピクチャーの幾つかに登場している彼女達を見ても、そんなイメージが強いというわけで、基本的にはキワドイ衣装のセクシーグループだったという側面も強いもんですから、気になる皆様はネット等々での探索をオススメ致します。
閑話休題。
しかし、ソロシンガーに転向・再デビューしてからの彼女は前述したとおり、持前の味わい深い声質と歌唱力で地道にファンを掴んでいた様で、レコードも相当数出しており、サイケおやじとしてもシングル盤を5枚、所有しておりますし、LPも後にCD化されたほどの傑作「女の旅路」という、ストーリー仕立てのトータルアルバムを残しています。
で、この「夜明けのハレルヤ」は作詞:ちあき哲也&作編曲:筒美京平が提供した、所謂「やさぐれ歌謡」でして、男と別れた女が夜明けの街で哀しい強がりと希望を歌うという、如何にもの歌謡世界がソウルフルな演歌調で表現されているんですねぇ~~♪
もちろん、「ハレルヤ」というのはキリスト教では「賛歌」とかの意味合いで用いられる言葉であり、欧州系宗教音楽ではコーラスの祈り言葉っぽく使われるのが常套手段である事を我が国の歌謡曲では、それを臆面もなく流用した楽曲が幾つもある中にあって、ここでは件の所謂「ハレルヤコーラス」をイントロから静謐な雰囲気作りにアレンジしているのが面映ゆい感じではありますが、それに続くラフなギターカッティングや強いビートを伴った演奏パートに負けないのが、いとのりかずこの重心の低い節回し (^^♪
このあたりの歌謡ソウルなフィーリングは筒美京平ならではの十八番の展開ですし、それゆえに……、ちょいと短い曲構成が勿体無いという本音も出てしまうのは、それだけ彼女の歌いっぷりが好きって事の裏返しとご理解くださいませ。
一概に比較は無理ではありますが、似て非なる和田アキ子とは歌謡曲っぽさが強い分だけ、いとのりかずこがサイケおやじは好きです (^^;
ということで、いとのりかずこも、本格的な音源の集成が望まれる歌手のひとりで、前述したピンキー・チックスも含めて、全てのキャリアを纏めたコンピレーション盤が出て欲しいものですねぇ~~。