■胸さわぎ c/w 私のかなしみ / 辻沢杏子 (東芝)
俳優が歌手としてレコードを出すのが普通だった「昭和」という時代、殊更アイドル業界においては、それ無くしては芸能界のトップにはなれない!?
みたいな認識が一般社会にもありましたから、女の子アイドルがテレビドラマや映画に出演し、歌と演技の両方で輝いてみせるというのが、ひとつの方程式でありました。
本日の主役たる辻沢杏子も、そ~したアイドルの典型であり、最初は子役からスタートした女優でありながら、女の子アイドルがブームの頂点にあった昭和59(1984)年には本格的なアイドルシンガーとして、長山洋子や荻野目洋子と同列に注目された存在でありました。
ただし、結果的に彼女は、やはり女優としての魅力が勝っていたという事でしょうか、大きなヒットは出せず、逆に映画やテレビドラマでは売れっ子になっていき、クールな雰囲気と裏腹に情熱的な演技も強い印象を残しているというところは、皆様ご存知のとおりです。
中でも、アイドルとしてのイメージが消えやらぬ昭和61(1986)年、東映のエロス大作として大いに喧伝された「大奥十八景(鈴木則文監督)」における鮮烈なヌードや濡れ場等々は爆発的な話題となりましたですねぇ~~ (^^♪
実際、この作品は成人指定ということで、アイドル時代からのファンにとっては、ひとつの踏み絵とまで云われていたほどですから (^^;
そして以降、ますます女優としての輝きは増すばかりだったんですが、しかし歌手として出したレコードが凡作ばかりだったはずもありません。
例えば昭和60(1985)年に出した本日掲載のシングル盤A面曲「胸さわぎ」は、作詞:安井かずみ&作曲:筒美京平からの提供なんですが、オンタイムでは幾分古い曲想が、あれぇ~?
これって、どっかで……?
という既視感を覚えるのも道理で、実は昭和50(1975)年に小林麻美に書いた「アパートの鍵」の歌詞と曲タイトルを変えたものだったのが、真相なんですねぇ~~!?!
また、それを温故知新のアレンジで纏め上げた若草恵も、流石に冴えていると思います。
しかも、ご丁寧(?)な事に、同じソングライタートリオのクレジットがあるB面曲「私のかなしみ」が、これまた小林麻美が昭和50(1975)年に前述「アパートの鍵」に続けて出したシングル盤のA面収録曲なんですから、たまりません (^^♪
いゃ~~、告白すればサイケおやじの密かな愛聴盤になっているんですよ、この辻沢杏子の掲載盤はっ!
以下は全くのサイケおやじの独断と偏見ではありますが、流石の御大・筒美京平も、昭和50年代末頃からは幾分ハズし気味の作品も散見され、それゆえに女の子アイドルには往年の名曲をカバーさせる手立てが目立っていた様に思っているんですが、これは小林麻美の裏名曲(?)を見事に復活させた隠れ傑作じゃ~ないでしょうか。
何よりも辻沢杏子のクールで熱い歌いっぷりが最高で、ある意味、これだって歌謡ロックですよねぇ~~~!
また、B面「私のかなしみ」の芝居っ気のある節回しも、ニクイばかり ♪♪~♪
ということで、辻沢杏子は婚約~結婚~再婚があって、芸能活動は中断ばかりしていたというか、一説には玉の輿に乗りまくっているというイメージがあるんで、なかなかアイドルシンガー時代が忘れられてしまったんでしょうか……?
今一度、辻沢杏子の歌が聴きたいものです。