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「フィンランド共産党の報告」          ネット虫

2006年11月25日 21時25分07秒 | Weblog
フィンランド共産党の報告
親愛なる友人、同志のみなさん、

わたしは、ギリシャ共産党に対して、まさに実際的な問題を一堂に会して討議する機会を提供されたことに感謝を述べたい。

フィンランドは一九九五年以来、欧州連合(EU)の一員である。この短期間に、社会民主党と保守政党が主導する連立政府の政策は、フィンランドの経済・軍事の両面において右翼的なものであることが確認された。

フィンランドの経済は成長を続けている。一九九九年には、上位五〇の大企業は三〇%も利益を拡大した。過去七年間の経済成長率は、EUの平均を上回っている。それにもかかわらず、政府は社会的・公共的な支出を削減している。公共支出の削減は、とりわけ社会保障・医療・住宅・教育に影響を及ぼしている。

経済状況は良いのに、五〇万人が職を失った。新たな雇用の多くは、恒常的な雇用ではない。数千人の人々、とりわけ青年たちが、貧困生活に追い込まれている。

失業・貧困・暴力その他の深刻かつ破壊的な社会問題は、内政および国際的な背景――欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)・世界銀行および欧州ラウンドテーブル[注1]等の様々な種類の非公開組織など――をともなった新自由主義政策に由来している。

フィンランド共産党は現在、二〇〇〇年十月の地方選挙の準備をしている。選挙綱領草案には、所得の再分配や民主主義の拡大など地方議会のための行動綱領が含まれている。われわれは、地方自治体は賃下げなしの時短(たとえば、それがふさわしい部門では六時間二交代制を採用するなど)の先駆者となるべきであると主張している。

フィンランド共産党のイニシアチブで、全国的な郵便サービス網の維持を要求する署名活動も行なわれている。フィンランド共産党は、国有企業および公共サービスの民営化の中止を要求する。党は、雇用を拡大し、情報社会の発達の可能性を開き、地域の発展と福祉サービスを振興する上での公共部門の役割を強調する。

新自由主義政策は、社会の軍事化も意味している。EUのアムステルダム条約によって、わが国には大きな変化が生じた。平和維持や危機管理などの様々な名目でNATO体制にフィンランドは一歩一歩近づいている。たとえば、フィンランドは欧州共通の兵器会社であるWEAG[注2]に参加している。フィンランドはNATOに対して、フィンランドがいかなる種類の兵器を購入するかを報告し、それらの兵器のうち一定の部分をNATO内で調達することを義務づけられている。昨秋からスウェーデンとフィンランドの外務省が行なっている集団的危機管理に関する共同提案は、現実的には、NATOと緊密に協力する欧州軍の創設支持へとつながる。NATOの兵士が非同盟国であるフィンランドで演習を行ない、フィンランドの兵士が海外でNATOの演習に参加している。

二〇〇〇年八月にはフィンランド軍がホーネット戦闘機とともにNATOの演習に参加する予定である。EUは、緊急展開ができる危機管理部隊の推進を決定し、現在は常設軍事機構、NATOとの共同計画その他の機構、西欧同盟(WEU)の統合などを、EU諸国防衛相・軍司令官会議において検討するようになっている。

フィンランドでの新しい動きとしては、一般社会への軍の露出がある。街頭やヘルシンキの公園での訓練や、郊外の農産物展示会に訪れた人向けの戦車の展示などが行なわれている。

このようなことが、大統領が一貫してNATOへの加盟は現実問題ではないと明言し、国民の六二%がNATO加盟に反対している国で行なわれているのである。

フィンランド共産党は、「EU以外の選択肢」を求め、EU条約の変更に関する国民投票をめざす運動を支持する。EU加盟諸国会議は、連邦主義者の意向に沿った条約変更を行なう見込みである。

六〇日間にわたって活動する六万の緊急展開軍を含む二〇万人規模の軍の創出をEUは計画している。その行動範囲は、EU諸国の域内ではなく、その外側である。これは、NATOが創設五〇周年にあたって行なった決定、すなわち必要とあらば世界のあらゆる場所で行動する可能性があるという決定に沿うものである。

フィンランド共産党は、フィンランドの代議員が、WEUのEUへの統合およびEUとNATOとの統合に対して賛成しないように要求する。われわれは、「欧州軍」は認められるべきではないことを、そして少なくともフィンランドは、この軍事統合の枠外にとどまるべきであることを要求する。政府代表は、労働時間短縮、労組が協約を結ぶ権利の確認、そして投機的な目的での国際的な資本の移転に対するいわゆるトービン税を課することをはじめとする議題を提案すべきである。

人類にとって致命的な経済・軍事政策に与する大々的な宣伝は、経済の新自由主義とアメリカ的思考――それは、強い者が常に勝ち、弱い者は敗北するのが当然だという、新ダーウィン主義の社会進化論に基づくものである――に基づいている。こうした宣伝はまた、素早い技術的・社会的変化――それは資本主義の下では、人々の間に不平等の増大をもたらす――を称揚している。

フィンランド共産党は、右翼に屈せず現在の政策とは別の選択肢を提示する勢力の協働を提案する。フィンランド共産党は、NGO活動家の広範なネットワークである「EUへのオルターナティブ」やフィンランド平和委員会などの諸運動と連絡・協働を行なっている。われわれは、NATOの侵略やロシアのチェチェン戦争、EUやフィンランドの軍事化に反対するNGOの運動やデモを組織しそれに参加している。

国際的には、われわれは労働時間短縮を求めるパリ、リスボン、アムステルダム、ケルンなどでのデモに参加し、それらを支援している。われわれは、WTOの政策に反対するシアトルのデモを、大資本や帝国主義によるグローバル化政策に対する人民の抵抗が増大する兆候を示すものとして捉えている。

われわれは、いまや世界規模で現在進行中の状況に抗して反撃を強化するときであると考える。共産党をはじめとする左翼諸勢力は、実在する社会主義世界体制からの支援がない世界に直面している。われわれは、この世界で進歩と社会主義をめざして闘うための道筋と勇気を見出さなければならない。換言すればこれは、政治離れが拡大し、反共宣伝が大々的に行なわれ、情報の洪水によって混乱の種がばらまかれるという非常に困難な中で、社会の新たな状況に対してどのようにすればよいかを学びながら、同盟関係を作りあげていくということである。

昨年五月、ギリシャ平和委員会はここアテネにおいて、世界平和委員会の重要な会議を開催した。その会議は、人民に真の平和と安全をもたらす新たな進路をめざす世界規模の運動を構築するための平和運動に着手する決定を下した。

昨年、そしていま再び、われわれはここに、新自由主義と軍国主義とは別の方向をめざす共産党および進歩的諸運動の協働を推進する可能性について討議するために集っている。

欧州をはじめ世界の各地で人民は、支配階級の政策に協働して抵抗するNGO組織や運動を構築しようとしている。

これは、共産党およびその他の左翼諸勢力の任務である。

われわれは、この新たな運動にわれわれのもつ能力を充てることができる。われわれは、真の組織を有し、世界を解明しそれを変革できる唯一の理論であるマルクス主義の理論を持っている。われわれの運動は、国際的で世界規模の運動である。われわれは、様々な状況のもとで日々の継続的な活動に必要とされる多くの種類の能力をもっている。これは、世界の人民のよりよい生活と未来をめざす広範な運動の強力な基盤を協働して構築する上で重要な要素となる。こうした運動が分裂すれば、われわれは弱体化し、われわれが左翼運動の歴史の中で知っているあらゆる問題に直面するだろう。しかし団結すれば、われわれは強力になり、そして勝利するだろう!

アテネ会議資料集第2集より

注1:一九八三年に結成された、欧州の主要産業の経営者で構成される協議会。

注2:Western European Armaments Group=西欧軍備グループ。フィンランドの正式加盟は二〇〇〇年十一月。ほかに、アイスランドを除く欧州のNATO加盟諸国とオーストリア、スウェーデンで構成。
                   
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