★東海放送人九条の会の2周年記念(昨年の十一月)に、中京大学教授で、中日新聞論説委員でもある飯室勝彦氏を迎え、「メディアの憲法報道を問う」という記念講演がありました。会のHPでそれを拝見し大変に興味深く読ませてもらいました。読者の皆様にぜひ紹介したいと連載掲載したいと思います。 (まもる)
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「メディアの憲法報道を問う」① 飯室勝彦氏
自己紹介を簡単に申し上げます。私は中日新聞に入社しまして38年間中日新聞の記者をやっておりました。記者として取材対象にしたのは裁判が比較的長かったんですが、最後は論説委員として12年ぐらい社説を書いておりました。今本業の方は中京大学で、こそばゆいんですが、一応教授として学生の相手をしております。
メディアの方の仕事は従でございまして、時に、私が書くべきだと社の論説の責任者が思ったテーマを書かしてもらうということでございます。ですから皆様方のなかにも中日新聞の社説をお読みになって、時に腹をお立てになったり、或いは共感を得られた方の文章の中に私が担当したものがあるかもしれません。
どっちの反応にしましても、新聞社およびライターにとっては非常に励みになるものでして、今後もどんどん手紙、メールなどで新聞社に感想をお寄せいただきたいと思います。
新聞社の中にいると見えないものが外にいると見えてくるという部分もあるんですね。自己批判を込めて今の報道に少し私の考えをご披露させていただきたいと思います。
「改憲熱は下がったのか」
導入部として新聞記事の話から入ります。今年の5月2日、朝日新聞の二面の時時刻刻という欄に「政界、改憲熱 今は昔」という記事が載りました。時時刻刻というのはその時々の一番大きな話題を解説を交えて掘り下げる欄なんですが、「政界、改憲熱 今は昔」というメインタイトルで「首相抑制、民主も乗らず」という見出しがついています。
首相というのはこのころは福田さんでした。要旨を簡単に言いますと、憲法改正の国民投票法案は成立したが、憲法審査会は未だ国会に出来ていない。当時の福田康夫首相は安倍さんと違って改憲ということを全然口にしなくなった。民主党もいまや政権を取ることに必死で憲法には全然関心がなさそうだ、という記事です。
福田さんは改憲のことを何も言わないまま政権を放り出し、いま麻生さんですね。麻生さんも経済問題の対応に追われて憲法改正ということは何も言いません。本来なら麻生さんも安倍さんと同じぐらい改憲意見のはずなんですが何にも言いません。
民主党の方も政権が取れるかもしれないと言うことで憲法にあまり関心を示さない。
とすると5月の朝日新聞の「政界、改憲熱 今は昔」という記事は正しかったのかなぁと思われるかもしれませんが、僕の見方はまったく違います。この記事を読んだときから、そんなことはないぞ、いま熱が下がったように見えるだけで、政界の改憲熱は相変わらず高いよというのが僕の意識でした。
この見方は甘いんじゃないのと思っていた矢先に、田母神論文問題なんですね。航空自衛隊のトップが侵略戦争を美化して、憲法改正すべきだということまで言い出した。
これは僕にしてみれば「やっぱりなぁ、それ見ろ」という感じだったんです。だって、その前後の選挙を見てますと、とても政界の、或いは国民一般の雰囲気が変わったとも思われないんですね。確かに参議院選では自民党を大敗させました。ですから今やとても三分の二なんて取れませんから憲法改正なんてことは言い出せない雰囲気になっていますが、その前の衆議院選では自民党を大勝させています。
そうしてみると、憲法を守る運動が拡がっているのは事実なんだが、その運動とは関係のないところでは、もっと風のようなもの、吹いてくる風のようなものが動かしているんではないか。ですから僕はいつも別の風が吹いてくると怖いなぁと思ってたんです。そういう時に、あの論文が出て来たわけです。ですからあれは、今新聞で扱われている以上にタイヘンな問題だと思っています。ゾッとしています。あれは形を変えた二二・六事件ではないか、という気がしています。
二二・六事件は言ってみれば政治のやり方が気に入らないと言って、軍の指導者たちがクーデターを起こそうとした事件ですね。
あの論文そのものは、あれで3百万円くれれば美味しいなぁという論文です。インターネットでアパグループというページを呼出しますとそこに論文の発表というウェブがありますから、そこで全文引き出せます。
「田母神論文の背景に眼を」
報道で一般的に言われていることは、あの論文は「政府見解と異なることを書いた」ということですが、もっと判りやすく言えばあの侵略戦争を美化し、正当化して、ねじ曲げた歴史の事実の上に日本の立場を組み立てている論文です。
ですから、表面的には「政府見解と異なることを自衛隊のトップが言っている」ということです。これ自体も問題です。政府にきちんと従って、政府の統制に従わなければならない人間が、統制に従わなかったんですからそれ自体問題ですけれども、しかし背景にはもっと重大な問題があるのではないか。第一にあのような人物をトップにした政治の責任という問題があります。任命したのは安倍内閣です。
あの人は隊内の雑誌などにあのようなことを書いてきていますし、発言もしているんですね。それを承知のうえで政府はトップにした。彼があの論文を発表出来たというのは、発表出来る雰囲気が自衛隊内にあったんじゃないでしょうか。これ発表したら「俺えらい目に遭うなぁ」ということを意識してたら、あんな論文を発表しないと思います。だから発表出来ると少なくとも彼が受け止める雰囲気があったんではないか。
三番目は自衛隊の航空幕僚幹部の教育部長とか教育課長という人が論文の募集に応募するよう隊員に働き掛けたという事実ですね。それに応じた人も、或いは自分で独自に出した人もいるんでしょうが、とにかく百人近い人が論文の募集に応募した。これは自衛隊の人事教育部が、隊員の教養を高めるためだ、教養教育のためだと言っているんですが、もっと別のテーマの論文募集だったら、それに応募するように勧めたでしょうか。そこは僕は疑問だと思っています。更に言えばそれに応じて百人もの人が応募する雰囲気があった。もっと問題なのは新聞の伝えるところによると、田母神さんの行動を擁護する声が自衛隊員のなかにも、自民党の国会議員にもあるということですね。自民党の外交国防部会では田母神さん擁護の声がしきりで、辞めさせたことに対する怒りがたくさん出たというくらいですから。
自衛隊の中に政府の見解や方針に不満を抱くグループが存在してきているのかなぁ――そういう「ゾッ」という感じなんですね。だとしたらこれはもう、単なる田母神さんの暴走では済まない問題なんだろうと、政府のコントロールがまったく効いていないおそれがあるということを考えましてゾッとしたんです。ですから結論を言ってしまうと、あれは田母神さんという特異なキャラクターの人が暴走したということで片づけるんではなくて、文民統制という憲法原理が揺らいでいるという捉え方をしないと正しくないのではないか、というのが僕の見方です。
「憲法の文民統制に違反した行為」
じつは、今回の報道では僕自身もちょっと物足りなさを感じます。新聞もテレビもあの報道の初動はよかったと思います。立ち上がりは鋭かったと思います。きっかけは、アパグループが問題になることには気づかないでニュースリリースを自慢げに防衛省の記者クラブに持ってきたというところにあるんですね。防衛省にいた記者たちはそれを見て、これは問題だと言って動き出して当日のあの記事になった。その初動を僕は、非常に立ち上がりは良かったと思って、さすがだなぁと思ってます。
ただ、ちょっとまだ踏み込みが浅いんじゃないかと言ったのは、先ほど私が申し上げた「政府見解と異なることを書いた」ということに眼を奪われすぎて、その言葉が盛んにニュースのなかに出てくるんですが、それは文民統制に反しているんだという集約の仕方が非常に弱かったんです。
文民統制という言葉が頻繁に出てきたのは参議院の外交防衛委員会が田母神さんを参考人に呼ぶということが決まった日からです。「今日、田母神さんが国会に出てくる」という記事あたりから、文民統制という見地の記事になっています。田母神さんを呼ばなくたって、あの論文を書いたこと自体が文民統制の問題だ、という鋭さは未だなかった。
参考人喚問が終わったら途端に報道が止まっちゃいました。今朝はもう田母神問題なんてほとんど新聞記事に載っていません。でもやることは未だいっぱいあったと思うんですね。田母神さんというヘンな人が突然現れたのか、という見地の検証が必要だろうと思うんです。つまり、自衛隊員の中にも自民党の国会議員のなかにも、あの幕僚長を擁護する声があるというのは、田母神さんがあの論文を書いても大丈夫だと思う雰囲気があるんだろうということなんです。
もっと遡って考えましょう。小泉内閣は中谷元という元職業軍人を防衛庁長官にしたんです。防衛大学校を卒業して職業軍人として防衛庁の高級幹部にいた人がたまたま今国会議員だからといって防衛庁長官にしたんです。
それからあのヒゲの隊長、イラクに行って水を配って有名になった佐藤さんと云う人は、国民に人気がありそうだというので自民党が国会議員にしたんですね。その人は現に今度の騒動のなかで田母神さんを擁護しています。新聞記事のなかに談話が載ってます。
「制服組が平気で首相官邸に出入り」
細かく新聞記事を読んでいる人は既にお気づきだと思いますが、そのころから制服の自衛隊員が公然と政治家に接触出来るようになっています。それまでは文民コントロールということを非常に重視して、政治家に説明するのは、同じ防衛庁の職員でも内局という、軍人じゃない人たちがやるという職掌になっていた。それを、判りにくいからと直接制服組に説明させた。
これは石破茂さんが最初の防衛庁長官のころにやった政策の変更ですよね。
新聞記事を読んでみますと、制服組が平気で首相官邸に出入りしている。今申し上げたことは僕固有の知識でもなんでもありません。みんな新聞に載ってます。田母神問題が起きた時その辺を掘り下げて歴史的に振り返って欲しかった。それによって、あの問題に対する理解はもっと深まったんじゃないか、という気はしてるんです。
ただ、そんなまとまった形にしない気持ちというのは僕は38年新聞記者をやってますから判るんです。さっき、今話したことはみんな新聞で知ったことだと云いました。で、記者にしてみれば、もう書いてあるという意識があるんですね。書いてあるから読者もみんな知ってるという気になっちゃうんです。
だけども立場を変えてみると新聞記者は自分は書く側だから書いたことを憶えているんですけれども、読者の側は新聞で読んだって三日も経てば忘れちゃうと思うんですね。大事な問題はこういう時には繰り返し繰り返しまとめて総括していかなければいけないんじゃないかなぁという物足りなさを感じました。
田母神問題は突発的な事態ではなくて、深い根のある問題だと考えた方がいいんではないか、とまとめて別の話題に入りたいと思います。
つづく
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「メディアの憲法報道を問う」① 飯室勝彦氏
自己紹介を簡単に申し上げます。私は中日新聞に入社しまして38年間中日新聞の記者をやっておりました。記者として取材対象にしたのは裁判が比較的長かったんですが、最後は論説委員として12年ぐらい社説を書いておりました。今本業の方は中京大学で、こそばゆいんですが、一応教授として学生の相手をしております。
メディアの方の仕事は従でございまして、時に、私が書くべきだと社の論説の責任者が思ったテーマを書かしてもらうということでございます。ですから皆様方のなかにも中日新聞の社説をお読みになって、時に腹をお立てになったり、或いは共感を得られた方の文章の中に私が担当したものがあるかもしれません。
どっちの反応にしましても、新聞社およびライターにとっては非常に励みになるものでして、今後もどんどん手紙、メールなどで新聞社に感想をお寄せいただきたいと思います。
新聞社の中にいると見えないものが外にいると見えてくるという部分もあるんですね。自己批判を込めて今の報道に少し私の考えをご披露させていただきたいと思います。
「改憲熱は下がったのか」
導入部として新聞記事の話から入ります。今年の5月2日、朝日新聞の二面の時時刻刻という欄に「政界、改憲熱 今は昔」という記事が載りました。時時刻刻というのはその時々の一番大きな話題を解説を交えて掘り下げる欄なんですが、「政界、改憲熱 今は昔」というメインタイトルで「首相抑制、民主も乗らず」という見出しがついています。
首相というのはこのころは福田さんでした。要旨を簡単に言いますと、憲法改正の国民投票法案は成立したが、憲法審査会は未だ国会に出来ていない。当時の福田康夫首相は安倍さんと違って改憲ということを全然口にしなくなった。民主党もいまや政権を取ることに必死で憲法には全然関心がなさそうだ、という記事です。
福田さんは改憲のことを何も言わないまま政権を放り出し、いま麻生さんですね。麻生さんも経済問題の対応に追われて憲法改正ということは何も言いません。本来なら麻生さんも安倍さんと同じぐらい改憲意見のはずなんですが何にも言いません。
民主党の方も政権が取れるかもしれないと言うことで憲法にあまり関心を示さない。
とすると5月の朝日新聞の「政界、改憲熱 今は昔」という記事は正しかったのかなぁと思われるかもしれませんが、僕の見方はまったく違います。この記事を読んだときから、そんなことはないぞ、いま熱が下がったように見えるだけで、政界の改憲熱は相変わらず高いよというのが僕の意識でした。
この見方は甘いんじゃないのと思っていた矢先に、田母神論文問題なんですね。航空自衛隊のトップが侵略戦争を美化して、憲法改正すべきだということまで言い出した。
これは僕にしてみれば「やっぱりなぁ、それ見ろ」という感じだったんです。だって、その前後の選挙を見てますと、とても政界の、或いは国民一般の雰囲気が変わったとも思われないんですね。確かに参議院選では自民党を大敗させました。ですから今やとても三分の二なんて取れませんから憲法改正なんてことは言い出せない雰囲気になっていますが、その前の衆議院選では自民党を大勝させています。
そうしてみると、憲法を守る運動が拡がっているのは事実なんだが、その運動とは関係のないところでは、もっと風のようなもの、吹いてくる風のようなものが動かしているんではないか。ですから僕はいつも別の風が吹いてくると怖いなぁと思ってたんです。そういう時に、あの論文が出て来たわけです。ですからあれは、今新聞で扱われている以上にタイヘンな問題だと思っています。ゾッとしています。あれは形を変えた二二・六事件ではないか、という気がしています。
二二・六事件は言ってみれば政治のやり方が気に入らないと言って、軍の指導者たちがクーデターを起こそうとした事件ですね。
あの論文そのものは、あれで3百万円くれれば美味しいなぁという論文です。インターネットでアパグループというページを呼出しますとそこに論文の発表というウェブがありますから、そこで全文引き出せます。
「田母神論文の背景に眼を」
報道で一般的に言われていることは、あの論文は「政府見解と異なることを書いた」ということですが、もっと判りやすく言えばあの侵略戦争を美化し、正当化して、ねじ曲げた歴史の事実の上に日本の立場を組み立てている論文です。
ですから、表面的には「政府見解と異なることを自衛隊のトップが言っている」ということです。これ自体も問題です。政府にきちんと従って、政府の統制に従わなければならない人間が、統制に従わなかったんですからそれ自体問題ですけれども、しかし背景にはもっと重大な問題があるのではないか。第一にあのような人物をトップにした政治の責任という問題があります。任命したのは安倍内閣です。
あの人は隊内の雑誌などにあのようなことを書いてきていますし、発言もしているんですね。それを承知のうえで政府はトップにした。彼があの論文を発表出来たというのは、発表出来る雰囲気が自衛隊内にあったんじゃないでしょうか。これ発表したら「俺えらい目に遭うなぁ」ということを意識してたら、あんな論文を発表しないと思います。だから発表出来ると少なくとも彼が受け止める雰囲気があったんではないか。
三番目は自衛隊の航空幕僚幹部の教育部長とか教育課長という人が論文の募集に応募するよう隊員に働き掛けたという事実ですね。それに応じた人も、或いは自分で独自に出した人もいるんでしょうが、とにかく百人近い人が論文の募集に応募した。これは自衛隊の人事教育部が、隊員の教養を高めるためだ、教養教育のためだと言っているんですが、もっと別のテーマの論文募集だったら、それに応募するように勧めたでしょうか。そこは僕は疑問だと思っています。更に言えばそれに応じて百人もの人が応募する雰囲気があった。もっと問題なのは新聞の伝えるところによると、田母神さんの行動を擁護する声が自衛隊員のなかにも、自民党の国会議員にもあるということですね。自民党の外交国防部会では田母神さん擁護の声がしきりで、辞めさせたことに対する怒りがたくさん出たというくらいですから。
自衛隊の中に政府の見解や方針に不満を抱くグループが存在してきているのかなぁ――そういう「ゾッ」という感じなんですね。だとしたらこれはもう、単なる田母神さんの暴走では済まない問題なんだろうと、政府のコントロールがまったく効いていないおそれがあるということを考えましてゾッとしたんです。ですから結論を言ってしまうと、あれは田母神さんという特異なキャラクターの人が暴走したということで片づけるんではなくて、文民統制という憲法原理が揺らいでいるという捉え方をしないと正しくないのではないか、というのが僕の見方です。
「憲法の文民統制に違反した行為」
じつは、今回の報道では僕自身もちょっと物足りなさを感じます。新聞もテレビもあの報道の初動はよかったと思います。立ち上がりは鋭かったと思います。きっかけは、アパグループが問題になることには気づかないでニュースリリースを自慢げに防衛省の記者クラブに持ってきたというところにあるんですね。防衛省にいた記者たちはそれを見て、これは問題だと言って動き出して当日のあの記事になった。その初動を僕は、非常に立ち上がりは良かったと思って、さすがだなぁと思ってます。
ただ、ちょっとまだ踏み込みが浅いんじゃないかと言ったのは、先ほど私が申し上げた「政府見解と異なることを書いた」ということに眼を奪われすぎて、その言葉が盛んにニュースのなかに出てくるんですが、それは文民統制に反しているんだという集約の仕方が非常に弱かったんです。
文民統制という言葉が頻繁に出てきたのは参議院の外交防衛委員会が田母神さんを参考人に呼ぶということが決まった日からです。「今日、田母神さんが国会に出てくる」という記事あたりから、文民統制という見地の記事になっています。田母神さんを呼ばなくたって、あの論文を書いたこと自体が文民統制の問題だ、という鋭さは未だなかった。
参考人喚問が終わったら途端に報道が止まっちゃいました。今朝はもう田母神問題なんてほとんど新聞記事に載っていません。でもやることは未だいっぱいあったと思うんですね。田母神さんというヘンな人が突然現れたのか、という見地の検証が必要だろうと思うんです。つまり、自衛隊員の中にも自民党の国会議員のなかにも、あの幕僚長を擁護する声があるというのは、田母神さんがあの論文を書いても大丈夫だと思う雰囲気があるんだろうということなんです。
もっと遡って考えましょう。小泉内閣は中谷元という元職業軍人を防衛庁長官にしたんです。防衛大学校を卒業して職業軍人として防衛庁の高級幹部にいた人がたまたま今国会議員だからといって防衛庁長官にしたんです。
それからあのヒゲの隊長、イラクに行って水を配って有名になった佐藤さんと云う人は、国民に人気がありそうだというので自民党が国会議員にしたんですね。その人は現に今度の騒動のなかで田母神さんを擁護しています。新聞記事のなかに談話が載ってます。
「制服組が平気で首相官邸に出入り」
細かく新聞記事を読んでいる人は既にお気づきだと思いますが、そのころから制服の自衛隊員が公然と政治家に接触出来るようになっています。それまでは文民コントロールということを非常に重視して、政治家に説明するのは、同じ防衛庁の職員でも内局という、軍人じゃない人たちがやるという職掌になっていた。それを、判りにくいからと直接制服組に説明させた。
これは石破茂さんが最初の防衛庁長官のころにやった政策の変更ですよね。
新聞記事を読んでみますと、制服組が平気で首相官邸に出入りしている。今申し上げたことは僕固有の知識でもなんでもありません。みんな新聞に載ってます。田母神問題が起きた時その辺を掘り下げて歴史的に振り返って欲しかった。それによって、あの問題に対する理解はもっと深まったんじゃないか、という気はしてるんです。
ただ、そんなまとまった形にしない気持ちというのは僕は38年新聞記者をやってますから判るんです。さっき、今話したことはみんな新聞で知ったことだと云いました。で、記者にしてみれば、もう書いてあるという意識があるんですね。書いてあるから読者もみんな知ってるという気になっちゃうんです。
だけども立場を変えてみると新聞記者は自分は書く側だから書いたことを憶えているんですけれども、読者の側は新聞で読んだって三日も経てば忘れちゃうと思うんですね。大事な問題はこういう時には繰り返し繰り返しまとめて総括していかなければいけないんじゃないかなぁという物足りなさを感じました。
田母神問題は突発的な事態ではなくて、深い根のある問題だと考えた方がいいんではないか、とまとめて別の話題に入りたいと思います。
つづく