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世界一増えぬ賃金、マスコミは今もこんな片棒担ぎ  文科系

2021年10月20日 13時26分31秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

「30年増えぬ賃金 日本22位」、「上昇率は4・4% 米47% 英44%」

 これは今朝の朝日新聞第一面二番手に掲載された総選挙向け記事の見出しだ。この対策、原因分析は、今の日本社会で最も重要なもの。特に、90年代までの給料生活を知っている世代にとっては、子や孫の将来を考えた場合に「このままでは死ぬに死にきれぬ」社会問題。この選挙でも最大争点のはずだ。日本のこの問題は特に、20年ほど前からはもう分かり切っていたもので、最近では麻生、安倍でさえ毎春闘ごとに「儲かっているのに賃金を上げぬ会社は守銭奴である」などとスピーチしてきたのである。何の成果もなかったから、常に口だけだったのだが。
 さて、この分かり切っていた国民死活問題を、今なお、日本マスコミはどれだけまともに取り上げているか。アメリカ・マスコミの原因分析との対比に於いて、日本のマスコミ批判を展開してみたい。

 例えば19年8月20日の中日新聞にこんな記事が載っていた。「株主最優先を米経済界転換」と見出しされ、書き出しはこうだ。
「米主要企業の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は19日、株主の利益を最優先する従来の方針を見直し、従業員や顧客、地域社会など全ての利害関係者の利益を尊重する新たな行動指針を発表した。これまで米経済界は「株主利益の最大化」を標榜してきたが、大きな転換点となる」

 また、この記事のちょっと後12月3日「ニューズウイーク日本版」の「宗旨変えしたノーベル賞学者」と言う記事には、こんな内容が書かれている。
 代表としてまずはポール・クルーグマンの最近の反省の言葉。
『アメリカの製造業を支えてきた中間層が経済・社会的な大変動に見舞われることに気付かなかった。中国との競争でアメリカの労働者が被る深刻な痛手を過小評価していた、というのだ』
 他の経済ジャーナリストなども今は、経済学者らの過去理論を批判しているのだそうだ。
『多くの経済学者が福祉を犠牲にし、効率性を最優先して「高賃金の雇用を切り捨て、低コストの技術産業に未来を託した」というのだ』

 そして、この論文の末尾まとめはこういうものになっている。こちらは、もう一人のノーベル賞経済学者・ジョセフ・スティグリッツが90年代から指摘し続けてきたグローバリゼーション批判なのだ。(なお、このブログにはスティグリッツ関連のエントリーは多くあるので、以下のようにしてお読みいただける。当ブログ右上欄外の検索欄に彼の名前を入れて、その右の「ウエブ」欄を「このブログ内で」と換えて、🔍印をクリックする)。
『最大の負け組はやはり、アメリカの労働者だ。経済学者はかって、好況下では労働者は自分たちの賃金を引き上げる力を持つと考えていた。だが最近の見方はちょっと違う。多国籍企業が全世界を自らの縄張りに収めて四半世紀がたち、グローバル化した資本は国内に縛られたままの労働者よりも優位に立った』


 さて、アメリカ・マスコミのこの分析「(中国相手の)経済空洞化」は、日本では世紀の移り目からすでに激しくなっていたはずだ。だのに、「新自由主義批判」にはならず、新自由主義経済議論だけが相変わらず主流であっただけでなく、今なお、マスコミ主流はそれを脱していない。だからこその、この日本労働者の急な没落。最近最新のそういう例をいくつか挙げてみよう。

・新首相の「金融所得税」発言に対して即株価下落が起こったときに、これを支持して株価下落「対策」を説いた論議、論調がどれだけ起こったか。この論議は当然、こういうものになるはずなのだ。IT世界企業などに対する15%市場税がG20で話されているが、新自由主義対策、金融対策などは一国ではできず、国連規模で世界一斉に取り決めねば不可能なもの。つまり、日本マスコミは、一国だけでできないものは論じない積りなのか。歴史をさかのぼると、企業と戦わねばならぬ8時間労働制の獲得などは、一国内一斉の制度にせねばならなかったはずだ。金融税もG20とか、国連とかに持ち込む話なのだ。安倍、麻生が、そんな努力をしていたのかどうか?

・今回の総選挙の愛知6区で、6回当選のトヨタ労組を基盤にした古本伸一郎氏の出馬が取りやめになったが、このことを批判したマスコミ論調がどれだけあったか。世界大企業や金融所得から税をもっととってきて再分配をする国際的取り決めも最緊急の課題だが、わざわざ労組の声を弱めるような行為は、上の対新自由主義のアメリカ(少なくとも表向きの)論調から言えば、はなはだしい誤りになるはずだ。日本最大の労組団体・連合が原発だけにこだわって野党共闘を軽視するところから労組らしい政治活動が何もできていない問題も、この総選挙に向けた今や、重大な俎上問題になるはずだ。それをこの古本立候補断念にかかわっては、こともあろうに事実経過だけをさらりと述べるだけ。自民党や、カーボンに苦闘する経営者と一体になって?? 自民党に圧力をかけられた経営者の意思を汲んで労組候補を降ろす?? 

 日本のマスコミって、どうしてこう現象の後追いばかり、未来に向かった正しい問題意識をなくするようなミスリードばかりなのだろう。この拙文冒頭にあげた朝日の記事見出しのように、自分が提起している最も重要な国民的課題に対してこうなのだから、驚く。

コメント (2)
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