長谷川幸洋談 嘘のような経産省の言動 文科系
只今さんがここで問題にされた、「経産省長官オフレコ発言公開事件」を調べてみた。20日の只今さん「今日の中日から」のコメントで話題になっている事件だ。只今さんが教えてくれた長谷川幸洋氏(以下Hとす)のサイトに直接当たって。その経過・本質などを是非ご紹介したいと、思い立った。原発被害賠償方針の焦点に絡んで、事があまりにも重大だし、経産官僚の駄々っ子同然の態度に吹き出しもしたり、その本質が覗かれたような気がしたので。
短い箇条書きなどを使って、なるべく分かり易くまとめてみるつもりだ。
なお、重要な前書きを初めにひと言。これは後にも問題にすることだが。Hは官僚のオフレコ発言というものを認めていない。認めていないから、従うとは言っていない。その下りを紹介しておこう。
官僚の「オフレコ」発言
『「オフレコ話を書いて大丈夫か」という読者に一言。官僚はよく自分の都合に合わせて「これはオフレコ」などというが、私は私自身が明示的に同意した場合を除いて、そういう条件は一切、無視することにしている。
今回は細野が勝手にそう言っただけで、私はなにも同意していないし、同意を求められてもいない。したがって、今回はオフレコでもなんでもない。相手が勝手にそう思い込んだだけの話である。』
『官僚にとって「オフレコ」というのは極めて重要なマスコミ操作の手段になっている。だから、記者のオフレコ破りは官僚にとって無視できない重要事なのだ。
官僚は記者クラブの会見などで「ここはオフレコだが」と前置きして、ちょっとした背景説明とか裏話を披露する。マスコミに書いてもらいたくないからではない。まったく逆で、実は自分の正体は明かさずに、マスコミにぜひ広めてもらいたいのだ。』
事件の経過
①枝野幸男官房長官が13日の会見で「銀行の債権放棄がなくても国民の理解が得られると思うか」という質問に対して、「得られることはないだろう」と答えた。(文科系の解説 自然災害であっても立ち直れないような大損害を受けた会社は潰れる。株主は大損をする。つまり、東電は先ず全てを吐き出すべきだから、大株主である銀行も通常の会社の株主のように、株券がただ同様になるということ)
②同じ日の午後、資源エネルギー庁が開いた論説委員懇談会で、細野哲弘長官が、「オフレコですが」と前置きして①に言及した。
「そのような官房長官発言があったことは報道で知っているが、はっきり言って『いまさら、そんなことを言うなら、これまでの私たちの苦労はいったい、なんだったのか。なんのためにこれを作ったのか』という気分ですね」
(文科系注 これははっきりと、官僚という事務屋による、内閣官房長官という政治家に対する反乱ののろしを上げた発言である。それを自覚しているからこそ、細野氏はこの談話をオフレコにしたのである。H氏はこれを、匿名・「オフレコ」という名の、公表して欲しい反乱のろし発言であると、正しくもみなしたわけである)
③Hは、以上の経過を自身のサイトに掲載し、論評を加えた。すると、経済産業省の成田達治大臣官房広報室長から、Hの職場上司に"抗議電話"。Hは、この次第もまた、Hサイトに報告し、18日の東京新聞でも『私説』という署名入りコラムで内容を紹介した。こんな批判④が含まれたものである。(文科系注 H氏本人を素通りして、上から圧力をかけさせようとしたのだ。H氏本人が確信犯であることが明らかだから、本人を素通りして)
④「経済産業省・資源エネルギー庁は歴代幹部の天下りが象徴するように、かねて東電と癒着し、原発を推進してきた。それが安全監視の甘さを招き、ひいては事故の遠因になった」と指摘しつつ、細野発言について「自分たちがどちらの側に立っているか、率直に述べている。まあ正直な官僚である」と書いた。
すると、経産省はまたもや思いもよらない方法で「反撃」に出た。東京新聞の経産省クラブ詰め記者に対して、事務次官など幹部との懇談に出席するのを禁止したのだ。いわゆる懇談への「出入り禁止処分」である。(文科系注 「こうすれば、東京新聞は折れるだろう」と、経産省はそんな読みなのだろう。現在の情勢では多分、これはやり過ぎである。経産省がいかに東電と癒着していて、いかに銀行を助けたいと思っているかを行為で示したことになるのだから。こうしないと、自分らの利権、地位、習慣も多分守れないという、そんな必死さの現われなのでもあろうが)
そこでHは成田氏の部屋を訊ねた。その時のやり取りが以下のもの。H氏サイトの文章そのままである。初めは、笑ってしまった。そして、心が寒くなった。
「これが新政権に無数の反抗をしてまで今の日本を自分ら習慣でもって支配しようとしている官僚たちの実態なのだ!」
【 「出入り禁止処分」について確認しようと思って、私は19日午後、事前のアポイントなしで経産省広報室を訪ね、成田を直撃した。アポなしで訪ねたのは、前回コラムで紹介したように、成田はまず「それは『上司』に聞いてください」と逃げようとしたからだ。事実を確認しないことには、話が始まらない。
直撃に沈黙する広報室長
成田は室長席に座っていた。私を見ると一瞬、驚いた様子を見せながらも「あちらへ」と部屋の隅の椅子に案内してくれた。以下は、やりとりである。
「どうも突然、時間をいただいて、すみません。いくつか聞きたいことがあって来たんですが・・・」と話し始めると、成田は途中で言葉をさえぎって「これはどうなるんですか?」と聞いた。
「どうなるって」
「いや、つまりこれは記事になるんですか」
「まだ何も決めていません」
「きょうお話を聞きたいと思ったのは、私のコラムがサイトに出た。そして昨日の東京新聞にも記事が出た。すると、経産省は東京新聞記者に対して幹部との懇談に出席するのを遠慮するよう求めたという。まず、それは本当なのか。私の記事に関連して、東京新聞記者の取材活動を制限するような措置をしたとすれば、それはどういう判断か?」
成田は沈黙している。
「つまり、事務次官や官房長との懇談への出席を遠慮してくれ、と言った件です」
成田はしばらく下を向いていたが、ようやく口を開くと「お話しできないですね」と言った。
「どうしてか」
「こないだのようなことがあったので・・・」
「こないだのようなこと、というのはどういうことか」
沈黙が続く。
「つまり、私があなたと電話で話をして、それを記事にしたということか。それでお話しできないということか」
さらにたたみ掛けた。
私は先ほど言った理解で正しいかどうか、を聞きに来ただけだ」
すると沈黙した後、成田は「これからミーティングがあるので、あらためてアポイントをとってください」と言った。
「返事がいつになるかはわからない」
「アポをとればいいんですね。今日中に再び会うのは可能か」
「分かりません」
「私は私の記事の件で経産省が弊社の記者に幹部との懇談を遠慮するように求めたと理解しているが・・・」
「知らない」
「え、知らないんですか?」。これには驚いた。
「時間がないので勘弁してほしい」
「では、いまここで面談を申し込む。それで、あらためて時間をいただけるか。ご返事を待っていればいいんですね」
「返事がいつになるかは分からない」
「いつか分からない。そういうことですか。分かりました。結構です。ありがとうございました」
私は「これ以上、粘ってもしょうがない」と判断して席を立って歩き出すと、成田は「ちょっと・・・」と後ろから引き留めた。 だが、立っているだけで相変わらず何も言わない。そこで私は言った。
「お時間を差し上げるから、ゆっくり考えてください」
「そうしましょう」 以上である。
記者への懇談禁止処分について、私はそれなりに事実関係を確認している。だが、成田は認めないばかりか「知らない」と言った。クラブ記者の懇談禁止処分について、成田が「知らない」というのが本当なら、広報室長の職責を果たしているとは言えない。広報失格である。 】
(続く)