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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ベッキーさんの直木賞

2009-09-15 07:24:50 | 読書
西安への機内で読もうと思ったが,直木賞受賞作を含む「鷺と雪」は高くて重いので,

北村 薫「玻璃の天」文春文庫 (2009/09)

を購入.語り手花村英子とそのおかかえ運転手・ベッキーさんが主人公.「街の灯」「鷺と雪」とこれで三部作を構成していると見れば,515事件で始まり226事件で終わる時代を背景とする,一種の連作長編で,成長途上の優等生・英子が歴史の流れをどう受け止めるかという教養小説っぽい側面もある.その気になれば,大戦を経て,戦後から平成まで続けることも可能だろう.そうなることを期待したいが,そうはいきそうもない.

連作の個々がミステリという趣向だが,ミステリとしては出来が悪い.この「玻璃の天」は三編から成るのだが,死亡広告がもとで兄弟が犬猿の仲になるという「幻の橋」は,事件当時 当事者が誰が犯人かを探そうとしないのが不自然.暗号ミステリ「想夫恋」は暗号を使う必然性がない.最後のステンドグラスの天窓から墜落死するという「玻璃の天」は馬鹿馬鹿しいところが良いのに,このシリーズでは馬鹿ミスのようには書けないという矛盾を感じた.

たいていミステリらしくなるのは全体の2/3を過ぎたあたり.個々のミステリは付け足しであって,この「玻璃の天」の巻ではベッキーさんの正体は?というのが大きなミステリと思えば,悪くはないかも.

その後直木賞受賞作という「鷺と雪」を「オール読物」で読んだが,これは長編のエピローグみたいなもので,ミステリの体をなしていない.「街の灯」から続けて読めばそれなりに思い入れが生じるだろうが,これだけ読んだら,「なんだこれ」で片付けられること必定.
直木賞の対象は短編としての「鷺と雪」ではなく,この作品を含む単行本としての「鷺と雪」らしい.ひとつ選んで雑誌に掲載するなら,別な作品の方がよかったんじゃないの.
コメント (2)
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