Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

元祖ユーモア・ミステリ ?

2011-11-06 08:26:24 | 読書
ロバート・バー 平山雄一訳「ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利」国書刊行会 (2010/10)

ホームズと同時代の,すなわち古き良き時代のミステリ.
もとフランス刑事局長のウジェーヌ・ヴァルモンがへまをして首になり,ロンドンで私立探偵になる.「我輩」の一人称で語られる (訳がうまい).探偵はホームズほど論理的ではなく,しばしばドジをふむ.事件はたいてい彼の予期せぬ結末となるのだが,たいていは冒頭で探偵自身が謙虚にもそのことをまず暗示する.

ポワロの造型はこのヴァルモンがヒントになっているという説もあるそうだが,ポワロより,この我輩さんのほうが愛嬌がある.
どの作品でも,フランス人探偵のイギリスの国民性に対する揶揄がマクラになっているが,作者はカナダ人,すなわち蝙蝠みたいに,英人仏人どちらでもあるような/ないようなヒトなんだろう.

全8篇が執筆順に並んでいて,最初の方はいささかまだるっこしいが,後になるほど調子があがる.「うっかり屋協同組合」は「健忘症連盟」のタイトルで江戸川乱歩のアンソロジーに入っているそうだ.

「ばかミス」は言い過ぎかもしれないが,とにかく面白かった.
いつの間にか忘れてしまい,何年か経ってから読み直て,また面白がることが出来る類いの一冊.
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