岡田鯱彦「薫大将と匂の宮―昭和ミステリ秘宝」 (扶桑社文庫 2001/01)
昭和25年に発表されたミステリ.著者は東京物理学校(いまの東京理科大)で物理化学を専攻したが,東京帝大国文科に入学しなおしたそうだ.
ここでは語り手は紫式部.宇治十帖の続編という体裁.連続殺人事件,薫大将と匂の宮の鞘当て,清少納言と紫式部の推理合戦 という趣向.源氏物語なんか,ろくに知らないのだけれど,おもしろかった.
このトリックなら,ポルノ小説仕立てにも書けそうだが,いかにも古文の現代語訳と言う文体は,さすが 大学教授.だれにも見当がつくことが探偵役の紫式部になかなか分からないあたり,現代と平安時代の違いなんだろうな,と妙に納得させられてしまう.
J 子がつねづね言うには,「良いかおり」は,「良いにおい」より上品なんだそうだ.岡田さんもそう思っていたのかも.薫大将にくらべ,匂の宮に点が辛い.
この文庫本は他にも十編以上の短編やらエッセイやらが収められていて,清少納言を主人公とするものもある.それを読んで思ったこと.薫大将は身体にえもいわれぬ芳香を帯びていたことになっているが,じつは栗の花粉の匂いじゃないの? 「芳香」と褒めるのは女性ばかりだし.それなら,本編「薫大将と匂の宮」も素直に解釈できる.
カバーイラストの女性は紫式部らしいが,なにも こう「さだすぎた」描き方をしなくてもいいんじゃないの?
昭和25年に発表されたミステリ.著者は東京物理学校(いまの東京理科大)で物理化学を専攻したが,東京帝大国文科に入学しなおしたそうだ.
ここでは語り手は紫式部.宇治十帖の続編という体裁.連続殺人事件,薫大将と匂の宮の鞘当て,清少納言と紫式部の推理合戦 という趣向.源氏物語なんか,ろくに知らないのだけれど,おもしろかった.
このトリックなら,ポルノ小説仕立てにも書けそうだが,いかにも古文の現代語訳と言う文体は,さすが 大学教授.だれにも見当がつくことが探偵役の紫式部になかなか分からないあたり,現代と平安時代の違いなんだろうな,と妙に納得させられてしまう.
J 子がつねづね言うには,「良いかおり」は,「良いにおい」より上品なんだそうだ.岡田さんもそう思っていたのかも.薫大将にくらべ,匂の宮に点が辛い.
この文庫本は他にも十編以上の短編やらエッセイやらが収められていて,清少納言を主人公とするものもある.それを読んで思ったこと.薫大将は身体にえもいわれぬ芳香を帯びていたことになっているが,じつは栗の花粉の匂いじゃないの? 「芳香」と褒めるのは女性ばかりだし.それなら,本編「薫大将と匂の宮」も素直に解釈できる.
カバーイラストの女性は紫式部らしいが,なにも こう「さだすぎた」描き方をしなくてもいいんじゃないの?