Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

井上ひさしの裏代表作「江戸紫絵巻源氏」

2012-04-24 09:09:30 | 読書
出版社/著者からの内容紹介
さる殿様が遊女桐壺に生ませた落し胤の源次.質屋の養子がひょんなことから六十万石の藩主となり将軍の替え玉,はては帝の替え玉となる波乱万丈,奇想天外の物語.

今は昔,「話の特集」という月刊誌があって,そこに連載されたのがこの源氏物語のパロディ.我が蔵書は話の特集創刊 25 周年を記念して,連載時のスタイルそのままで単行本化されたもの.厚さ約 5cm だが,じつはわざと ? 厚くて悪い紙を使っているためで,ページ数はそんなにない.ネットで見たらけっこう中古が出品されていた.
一時.中公文庫からも上下二巻で出ていたが,本屋で立ち読みしたら挿絵がなかったと思う.この本は山下勇三画伯のオリジナル挿絵が無ければ,魅力半減,いや 8 割引かも.どんな絵かはこの不鮮明なカットから想像して下さい.
でも挿絵付きでは (いや 挿絵が無くても),未成年には刺激が強すぎるだろう.

あの場面を,井上式羅列歌でつなぐという形式.ストーリーは最初のうちこそ源氏物語をなぞっているが,明石入道 (ここでは蛸入道) が登場するあたりから,著者も尻をまくったらしく,オリジナルからどんどん離れ,それに連れて面白くなる.著者自身の直木賞受賞とか,執筆に行き詰まって失踪した事件,オーストラリア旅行とかも取り込まれている.宇治十帖 (蛆十帖) を繰り返したあげく,ラストでは主人公は海外に雄飛する.

吉里吉里人や手鎖心中がタテマエなら,こちらはホンネ.だから,途中で書くのがいやになったり,明らかに手を抜いたり,また頑張ったり,というのがうかがえる.

「井上式羅列歌」は,著者は原稿用紙を埋めるためと称しているが,著者の日本語への蘊蓄をすべてぶちこんだようなもので,地の文,すなわち,ふつうの小説を書くよりエネルギーがいるかもしれない...もっともこの羅列歌が出て来ると私の場合はめんどくさくなって,3/4 くらいは読み飛ばしてしまうのだった.番外に替え歌特集があり,宴会などで役立つかも...たぶん役立たないでしょう.
コメント
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