大学で新入生に毎年1コマ物理の話をする機会をいただいている.例年はピタゴラス音律の由来などを喋っているのだが,ことしは高校数学の延長としてのフーリエ解析を前置きにしたいと思った.しかし前置きだけで大半の時間を費やしてしまった.
あとで熱心な学生さんから質問されてわかった反省点は,
(1)なんとか数式で定義できる関数をすおな関数で近似することと,(2)実験データのようなわけのわからない関数をすなおな関数で近似すること,の二つをはっきり区別して示さなかったことである
矩形波列を三角多項式で書いて見せるのが (1) の例で,ばらついた点列から実験結果をモード分解するのが (2) の例.(2)の必要性は,最小自乗法とともに,卒論などで自分で実験を経験しないと必要性が認識できないだろう.
「展開」という言葉からは,テイラー展開,フーリエ展開,ローラン展開などが連想される.これらの関係について,大学で,親切な先生いちおう説明するらしい.こちらは名工大の先生のページから.
自分には到達できない境地だが,眼光紙背に徹するなら,展開式をみればこうした疑問は解決するはず.
写真は長らくお世話になっている公式集.それぞれ
小林 幹雄, 鈴木 七緒, 黒崎 千代子, 福田 安蔵, 安岡 善則「数学公式集」共立出版; 新装版 (2005/5)
森口 繁一, 宇田川 銈久, 一松 信「岩波 数学公式 I-III」岩波書店; 新装版 (1987/3)
岩波は 1956,共立は 1959 初版.KEK の Y 先生は岩波本の誤植を経験されたとのことである.もしかしたら小生などは誤植に気づかずに使ったかもしれない.でも公式集もかなりの部分を Mathematica にとって代わられているなあ.