Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

東京自叙伝

2017-06-28 08:43:32 | 読書
奥泉 光,集英社文庫 (2017/5).単行本は 集英社 (2014/5/2).

内容(Amazon 「BOOK」データベースより)*****
舞台は東京。地中に潜む「地霊」が、歴史の暗黒面を生きたネズミや人間に憑依して、自らの来歴を軽妙洒脱に語り出す。唯一無二の原理は「なるようにしかならぬ」。明治維新、第二次世界大戦、バブル崩壊から福島第一原発事故まで…首都・東京に暗躍した、「地霊」の無責任一代記! 史実の裏側で、滅亡へ向かう東京を予言する。果てしないスケールで描かれた第50回谷崎潤一郎賞受賞作。*****

この著者はタイトルのつけ方がうまく,つい手を伸ばすが,読んで見るとつまらないことが多かった.でも,これは面白かった.でも長すぎる !
谷崎賞受賞作だそうだが,谷崎ってこうう小説を書く人だったのかな ?

上記データベースに「一代記」とあるが,目次では6つの章に6人の名前が振られている.主人公は東京の「地霊」であり,6人は地霊に取り憑かれた人々.ただし地霊は蛆虫や鼠や猫や,つまり何にでも憑依する.時代が下るにつれ,取り憑かれた人間の意識に,過去に同じように取り憑かれた人間の意識や,同時代で取り憑かれている他人 (及び 鼠など) の意識がミックスし混沌とする.

明治以来の事件を織り込んで発展するのだが,読んでいるうちに,こういう手法ならいくらでも続けられるじゃないかと思ってしまう.1ページ-数ページおきに小見出しが打たれているが,小見出しだけ拾って,わかったという気分になれる.例えば,唯一女性の名を冠した章の小見出しを途中から途中まで書き出すしてみると,

...どら息子との思い出...ディスコで遊興三昧...原生動物的快楽を知る...無個性ならば問題なし...ジュリアナ東京...カネに不住なし...自動車を贈られる...腐れ縁のはじまり...あいも変わらぬ東京散歩...

という具合.
解説 原武史.

☆☆☆
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