Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

北斎になりすました女 葛飾応為伝

2020-06-07 08:51:37 | 読書
檀乃歩也,講談社(2020/3).著者はテレビ番組の企画構成作家.応為をテーマとした番組でいくつかの賞を受けた.

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「おうい」「おーうい」 仕事の合間、繰り返される呼び声。 北斎の口ぐせ。 天才絵師の壮大な画業を支えた共作者、三女お栄の画号はここからきた。
光と影の女絵師・葛飾応為。 「美人画を描かせたら俺より上手い」と言わしめた、もう一人の天才。 署名を持たない絵を世界の美術館に探し、歴史の闇に隠れた女性の鮮やかな生涯を描き出す。
「おうい、どこいった」
*****

「...なりすました女」というタイトルはどうかと思う,と言うのが,この本を読んだ後の感想.本人に「なりすます」という意識はなかったようだ.いっそ「北斎になった女」ではいかが.

北斎の作品はじつは父と娘のふたりの「工房」製.北斎の落款はトレードマーク.そうしないと絵が売れない.はじめは構図を父,細部を娘という分担だった.しかし父は白内障を煩い,手が震えて直線が引けなくなる.晩年の肉筆画では作品における応為の比重は大きい...と,著者は考える.学術的にどうなのかは知らないが,面白い.



しかし応為単独作とされる作品もある.左の「吉原格子先之図」の光と影は,北斎作にはない独特な味わいを持つ傑作だ..

北斎は,美人画では娘に敵わないと言ったと言う.娘は容姿も生活態度も女性的ではないが,描写は繊細だ.本書にある久保田一洋の言によれば,応為の美人画にはふたつの特徴がある.指先の描写とほつれ髪である.父・北斎の描く指先は男性らしくごつごつと簡略化されており,また北斎はもともと,ほつれ髪なんか描く気がない.これらの特徴があれば,北斎作とされていても,応威の手が入っている.右はボストン美術館蔵の応為作「三曲合奏図」の一部である.

しかし残念ながら本書には,このような指先とほつれ髪をアップした図版がない...と言うより,本文で言及した図版が見当たらないことがしばしばある.そのくせ「吉原格子先之図」はカラー口絵のみならずグレイスケールが本文にも収まっている.「夜桜美人図」は表紙カバーも入れれば3枚も! この辺りがちぐはぐなのが惜しい.

新書よりちよっと容量が多い程度だが,北斎とシーボルトの関係なども初めて聞いた.
図書館で借用.
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