Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

福永武彦「異邦の薫り」

2020-06-29 09:47:00 | 読書
新潮社(1979/3).

「翻訳の授業」で思い出したのがこの本.授業や研究とは無関係なエッセイだが,帯にあるように,対象は明治・大正・昭和を通じ13冊の訳詩集である.福永は小説家にしてフランス文学者で,本のタイトルはボードレールの詩から取ったという.しかし取り上げているのはフランスのものだけではない.

13冊とは
森鴎外「於母影」,上田敏「海潮音」,永井荷風「珊瑚集」,堀口大学「月下の一群」,日夏耿之介「海表集」,佐藤春夫「車塵集」,「山内義雄訳詩集」,鈴木信太郎「近代仏蘭西象徴詩抄」,茅野蕭々「リルケ詩抄」,高村 光太郎「明るい時」,呉茂一「ギリシャ・ローマ古詩鈔」,金素雲「朝鮮詩集」,寿岳文章「神曲」.
巻末に訳詩集略年表.
複数の詩人の詩をひとりが訳した本が多いが,例外は茅野,高村,寿岳.
佐藤のは中国の女流詩人による漢詩集.

原則として原詩と訳詩が対比されている.神曲では数人の訳が並べられていて、授業で聞いたように解釈したくなる.
しかし朝鮮詩集は例外というところに違和感.

カット・挿画 : 福沢一郎.しゃれた本だが,書物の表紙の写真は小さく不鮮明なのは,この時代の本だから仕方がない,か.

当時30代後半,周囲がモーレツに働いていたのに,こんな本を読んでいたと見える.しかし,実際にこの中の詩集を一冊でも通読したかというと,そんなことはない.スイングジャーナルのようなジャズ雑誌を読んで,新譜をたくさん聴いた気分になったのと似たようなものだ.
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