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噺は生きている - 「古典落語」進化論

2021-02-03 13:56:18 | 読書
広瀬 和生,ちくま文庫(2021/1).単行本は 2017/7.

出版社による内容紹介*****
同じ「芝浜」は一つとしてない。志ん生、文楽、圓生ら昭和の名人から、志ん朝、談志、さらには小三治、談春、一之輔など現役トップの落語家まで、彼らは「古典落語」の代表的演目を分析し、アレンジを加え、ときに解体もしながら、どう演じてきたのか。演目の進化から落語の“本質”に迫る、画期的落語評論。文庫化にあたり、「死神」「居残り佐平次」「子別れ」についての書き下ろしを増補。*****

文庫カバーには5つの噺が並んでいるが,紺屋高尾と幾代餅は同じようなストーリーなので,第1章 芝浜 / 第2章 富久 / 第3章 紺屋高尾と幾代餅 / 第4章 文七元結 と言う構成.

例えば「第2章 富久」は酒乱でしくじり貧乏している幇間が,贔屓の火事見舞いにいった間に自分の家も火事になり,富くじの札を焼いたと思うが,その札が千両の大当たりで...という筋.登場人物の性格の描写,いくつかの出来事のどこに力を入れるかなどが演者によって異なる.この第2章の章立ては
 愛すべき幇間 - 文楽
 効果的な第三者目線 - 志ん生
 酒乱の男 - 可楽
 細部のリアリティ - 小さん
 愛想のいい幇間 - 馬生
 劇的なカタルシス - 談志
 計算されつくした演出 - 志ん朝
 貧乏の切実さ - 小三治
 運・不運に翻弄される男 - 圓楽
あとまだ,知らない落語家が並んでいるが省略.

20代まで東京人だったので,寄席にはよく行ったが,この本にある「大ネタ」は時間の制限があってめったに聞いたことがない.ちゃんと聞いたのはCDを買った三木助の芝浜くらい.実際に聴いたことがないものについて読んで面白いだろうか...と思いながら,結局面白く読んでしまった.

著者は1960年生まれで,ビデオ・オーディオが残っている口演が中心だが,紺屋高尾はまず円朝の速記から説き起こされる.談志がお好きらしい.芸術協会の古典派は無視.
「進化論」というタイトルは良い方向に進化するという前提に立っているらしい.
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