岩木一麻「がん消滅の罠 完全寛解の謎」宝島文庫(2018/1).
単行本は,宝島社(2017/1).刊行当時読みたいと思ったがそのままになっていたのを,図書館で見つけた.テレビドラマ化され2018/4に放映されたそうだ.
Amazon 引用の「BOOK」データベースによれば
*****呼吸器内科の夏目医師は生命保険会社勤務の友人からある指摘を受ける.夏目が余命半年の宣告をした肺腺がん患者が,リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存,病巣も消え去っているという.同様の保険金支払いが続けて起きており,今回で4例目.不審に感じた夏目は同僚の羽島と調査を始める.連続する奇妙ながん消失の謎.。がん治療の世界で何が起こっているのだろうか---*****
がん消滅という医科学小説と,人間ミステリの二面性を持つ小説.
医科学小説面 : 著者はがんセンター,放医研に勤務した経歴がある.
ポナステロンAとかいう化学物質ががんの「自殺装置」として作用することが,がん消滅のトリックとして用いられている.このことが本当なのか,よく知られたことなのか,ウェブをちょっと覗いた程度ではわからない.本当で既知のこととすれば探偵役 (夏目と羽島) がなぜそこに気づかないまま終わってしまったのかが疑問.
がん消滅のトリックは,まくらを含めて3つ書かれている.最後のこの,ポナステロンAに関するトリックだけは難解だが,おおむね がんに関する記述は親切丁寧だった,
人間ミステリの方は,3部構成の最後の第3部で拍車がかかる.ここでいろんなことが起こりすぎ,それが小説の格調を低いものにした感じ.かっての夏目の恩師が黒幕だが,この先生の性格が首尾一貫していないように思った.最後の1行には面食らったが,伏線は張ってあるのだった.
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