Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

二笑亭綺譚

2019-05-02 08:59:33 | 読書
式場隆三郎、藤森照信、赤瀬川原平、式場隆成、岸武臣「二笑亭綺譚 五〇年目の再訪記」求龍堂 (1989).

「郵便配達夫シュヴァルの理想宮」で思い出したこの,定価3600円の豪華本が,まだ我が書棚に存在していた.
1993年にちくま文庫入りしていた.

「二笑亭」は深川の門前仲町に存在した住宅で,1939 年精神病理学者 式場隆三郎により『二笑亭綺譚』として世に紹介された.この本はそれから50年後の出版で,オリジナルの文章,写真図版を再録したほか,「50年目の再訪記」として,藤森照信,赤瀬川原平らによる有用無用の書き下ろしを加えて構成されている.式場隆三郎は裸の大将・山下清の発見者でもある.

狂人が金に飽かせて作った住宅で,式場隆成 (式場隆三郎の子息) の表現を借りれば,
「まるで歯をむきだして笑っている人間のようなファサード.悪意に満ちた迷路のような内部.昇れない梯子,使えない押し入れ,奇妙な工夫が凝らされた和洋合体風呂.この家では機能すべきものが機能せず,そのくせ機能する必要のない機能が異常な努力で創案されている...」

式場隆三郎によれば,徐々に精神病が進行したために狂人とは見られず,10余年にわたって病症の進むに任せて家屋の建築を続けた珍しい例となる.建築と工芸美術の立場から見ると,材料の良いことは無類であって,部分的には美しく,随所に非凡な才能がひらめいている.しかし作者の精神分裂が全体を支配しているため,なんとも言えぬ混乱した,索漠たるものになったのだそうだ.

写真はカラーでなくモノクロで,おまけに取り壊し寸前に撮られたものらしく廃墟みたい.本書の再訪記中には,岸武臣制作の模型があるが,むしろどこかに再現して,入場料を取ったらどうだろう.

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