文春文庫 (2023/2).単行本刊行は 2020/7.画像は単行本のカバーだが,文庫のカバーもほとんど同じ.
この作家の初期の作品は好きだったし,「アンダーグラウンド」などのノンフィクションは繰り返し読んだ.しかしノーベル賞を噂される頃から,意識して遠ざかってしまった.
「猫を棄てる」の経験から,今のように,あまり本を読む気にならないときに読むにはいいかなと思って購入.
単行本の惹句*****
6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 「一人称単数」の世界にようこそ。
収録作
「石のまくらに」「クリーム」「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」「『ヤクルト・スワローズ詩集』」「謝肉祭(Carnaval)」「品川猿の告白」(以上、「文學界」に随時発表)「一人称単数」(書き下ろし)*****
上記文章には「切り口が増えていけばいくほど」とあるが,ぼくに言わせればどの切り口も同じようで,手慣れた「いっちょ上がり」作品集である.
「チャーリー・パーカー...」は,著者が学生時代に書いたという架空のレコードに対する評論の引用から始まるが,たぶんこの評論自体も架空なんだろう.前世紀だったら喜んで読んだと思うが,今では 歳はとりたくないもので,またかよ ヒトを馬鹿にしている と感じてしまった.「ウィズ・ザ・ビートルズ...」はまだ ましだったかな.ぼく的ベストは,唯一の書き下ろし「一人称単数」.次点は「謝肉祭」.
まぁ確かに,読む気がないときに読むにはいい本であった...東野圭吾でも,宮部みゆきでも,誰でも良かったようなものだけれど.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます