斎藤恭一,イースト・プレス(2020/5).サブタイトル「不人気学科教授奮闘記」.
目次より*****
序 章 「大学崩壊」と嘆いても始まらない
第1章 未来ある高校生に必死でPR
「模擬講義」奮闘録!/ 世の中には、とんでもなくスゴイ高校があるんだ / キャンパスツアーで囲い込め / 進路を高校二年で決めさせる必要などない / 何もしなかったら受験生は増えませんが / すべての科目に興味を持って授業を真剣に聴こう...
第2章 市民にも「理科」に馴染んでもらおう
千葉大教授は予備校にまで行く! /「市民講座」という他流試合! / セシウム吸着繊維『ガガ』の実力 :「分析展2011」での集客における秘策
第3章 「学生指導」はテンヤワンヤ
「ベストティーチャー賞」は断じて名誉である! / 学生という名の「未熟者」を引率する!/ オリエンテーション合宿での玉入れレク /「研究室」運営とは、まことに大仕事である!/ 大学祭だって役に立つ / 理系こそ「作文力」が試される!
第4章 大学という「組織」の経営は悲喜こもごも
教授会、審査会の緊張感たるや!/ 重荷でも委員は引き受けるしかない!/ 干されちゃったなら、本でも書くしかないな
終 章 「研究」は一人では成し遂げられない
研究資金は死ぬ気で確保せねば!/ 産学連携し、情熱を胸に研究してきた!/ 学生には指導教員が必要だった、指導教員には学生が必要だ*****
著者は早大工学部応用化学科卒業,東大大学院工学系研究科化学工学専攻修了.東大工学部助手・助教授を経て、2019年まで千葉大学工学部教授.専門は、放射線グラフト重合法による高分子吸着材の開発.一般的・教養的な著書多数.
本書は千葉大時代中心.この大学が広島大学と似たようなランクにあるので (と言ったらどちらからも叱られそうだが) 興味を持って,図書館で借用.
16 トンより一回り歳下だが,第3章以下は会社で言えば一昔前のモーレツ社員の自慢話につきあわされた感じ,とはいえ共感できるところは多々あった.
読みどころは高校生・予備校生への大学 PR 努力を書いた第1章と第2章.16 トンも国立大教員の端くれだったが,高校生・予備校生に大学を PR したいという気は全く起こらなかった.著者は 27 年も千葉大に在籍し大学への愛着も深かったことと思うが,16 トンが広島大学にいたのはたった6年だったせいもありそう.自分は大学運営にも PR にも第三者的に,冷ややかに付き合っていたと思う.
この本の内容は文系の教授には当てはまらない.では文系の教授って何をしているのか 16 トンにも不思議.「理系こそ国語と英語」という著者の主張には大賛成.
理系には理学系と工学系があるが,この違いがわからない理系志望の受験生にどちらかを選ばせるのも確かに問題だ.例えば「電気は物理なのになぜ工学部なの?」は高校生によくある疑問だと思う.
タイトルが「大学教授が『研究をしている』と思ったら大間違いだ」では,言い過ぎかな?
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