荒川洋治「霧中の読書」みすず書房(2019/10) 中の「現象のなかの作品」という章の「活字の別れ」と題する項.1980年あたりから,活版印刷からオフセットへの移行が始まるが,この時期にあえて活版印刷で発行された文学書が2ページ弱にわたってリストアップされている.
理工学書のロングセラーでは,かなり後まで活版印刷がはばをきかせていた.我が書棚では 高橋健人「物理数学」培風館 が,奥付によれば 1958年6月 初版発行,手持ちは 1996年9月 初版第44刷発行 であり,お疲れの表情である.
しかし,活字への愛着を前面に押し出した本は
金田理恵「ぜんまい屋の葉書」筑摩書房 (1991/5)
であろう.Amazon 古書価格は 8640 円より.大事にしよう.
Amazon 引用の MARC データベースによれば
*****「ぜんまい屋」とはネジとゼンマイのぜんまいで「人に親しい機械」という意味をこめている。「ぜんまい屋」こと金田理恵が、手刷りの活版印刷機で刷った葉書47枚。小さな心の動きや季節の移り変わりが美しい葉書に描かれている。*****
このページですこし中をのぞくことができる.
著者は松屋銀座の「遊びのギャラリー」を担当されたこともあるらしい,このキャラリーはいまだにわが銀ブラコースに入っている.
「...の葉書」は著者の美術作品のようなものだが,文学的な作品解説を
金田理恵「ぜんまい屋の作文」龜鳴屋(かめなくや 2012/4)
のなかで読むことができる.著者の最新刊は「道端の椅子 ぜんまい屋の北京」龜鳴屋 で,こちらは写真が中心らしい.
尾道の「活版カンパネルラ」では活版印刷を体験できる.名刺を作りたいと思っていたのだが,コロナウイルスのあおりで現在休業中.
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