2017 年 6 月 25 日の朝日新聞ディジタルの「戦前の検閲、生々しい実態」という記事によれば,戦後.占領軍に接収されてアメリカに渡り,現在米国議会図書館所蔵の,かって内務省が検閲して発売頒布禁止(発禁)にした本など 1327 点を,国立国会図書館がデジタル画像で公開した.
小林多喜二「蟹工船」改訂版(1930)も含まれ,http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10297644にある.このように表紙にいろいろ書き込みがある.
この小説は最近再評価され,新潮文庫の『蟹工船・党生活者』は2008年に50万部以上のベストセラーになった.漫画も出た.半世紀以上前,学生時代に読んだが,あまり覚えていない.青空文庫で再読したが今日的評価ではたいしたことない小説と思った.
デジタル版では伏字が多いが,この程度で発禁だったんだ!! 123-124 ページの赤線部分が問題にされたようだ.
小説のテーマ自体をさておき,もっぱら文言 (もんごん) を問題にするところがお役所的.
むしろ前後して読んだ 橋爪 健 「多喜二虐殺」新潮社 (1962) の印象が蟹工船より強烈で,事実は小説より怖いと感じた.この本は絶版だが,あまり評価されていないようで,市立図書館にも大学図書館にもない.
蟹工船の発禁処分は開戦直前のように思っていたが,昭和初期 1930 年のことであった.ちなみに悪名高き共謀法と関連して話題となっている治安維持法の公布・施行は 1925 年で,1928 年には改正 ? された.多喜二虐殺は 1933 年のことで,Wikipedia に要約されている.
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