磯崎憲一郎「日本蒙昧前史」文藝春秋 (文春文庫 2023/12).
著者の芥川賞受賞作は読んだのだけれど,内容はよく覚えていない.帯によれば,この「...蒙昧前史」は第 56 回谷崎潤一郎賞受賞作だそうだ.「賞」というものはもらったことがなく,ヒトにあげるのも嫌だったが,本の帯などにあると手に取ってしまうのが,権威に弱いところ かな.
大阪万博・太陽の塔に立て籠った「目玉男」,製菓メーカー社長の誘拐,五つ子の誕生,グアム島で発見された元日本兵など,昭和の終わりにマスコミをにぎわせた出来事たちを題材にした小説.本文には固有名詞皆無,会話皆無.画像のような改行がない (皆無ではない)活字の組み方で,ちゃんと読むとえらく時間がかかる.こうした文体だと,創作に違いないと思われる部分が,ノンフィクションと取れてしまう.
ただし文章にはある種のリズムがあって心地よい.
後になるほど おもしろくなった.初出は「文学界」2019 年1月号 - 2020 年3月号 に 4-5 ヶ月おき.書いているうちに調子が出たのか.それとも一気読みの過程で,読む側が慣れたのか.
タイトルについて.
goo 国語辞書における 「もうまい 蒙昧」 の解説*****
[名・形動]暗いこと。転じて、知識が不十分で道理にくらいこと。また、そのさま。愚昧。「—な大衆」「無知—」*****
なぜこのタイトルなんだろう.
この作品で眼玉男は「万博を中止にしてくれるまでは,死んでもここ (太陽の塔の眼玉) から動きません」と喚くが,じつは開会式のテレビ中継を見たときにき初めて大阪万博というイベントを知り,太陽の塔なるモニュメントの存在を知ったことになっている.これなど蒙昧そのものだが,フィクシャスではある.
眼玉男万博が「蒙昧前史」で,2025 年の大阪万博の国費公費の雪だるま式濫費が「後史」? 安倍派のパーティ券代のネコババ裏金化も,ロッキード事件などの「後史」かな ?
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