レイ・ブラッドベリ,日暮雅通 訳,福武書店 (ミステリ ベイパーバックス 1994/7).
ハヤカワ ボケットミステリそっくりと言いたいが,どこか野暮ったい造本.2005/11 に文藝春秋 (べつな出版社 !) から「入手至難だった幻想探偵小説」として「待望の復刊」.原題は Graveyard for Lunatics : Another Tales of Two Cities.日本語タイトルは,これはこれでいいかもしれない.
学生時代にこの著者の「火星年代記」「華氏 451 度」などに浸った.その名残りでこの本も買ったのだが,SF とは勝手が違い,途中で放り出したままになっていた.蔵書を整理しようと思ったのが契機となり,このたび通読した.
「MARC」データベースより*****
1954年のハリウッド。シナリオライターの私は友人ロイと斬新な怪物映画作りに励んでいた。ある雨の夜、墓地を訪れた私は20年前に死んだはずの映画会社のオーナーを見た。そして事件が次々に起こって… *****
著者はシナリオライターで,ジョン・ヒューストン監督の「白鯨」は彼の脚本によるものだという.舞台はハリウッドの撮影所.墓地が隣接していて,このふたつの場所が二都物語の舞台に喩えられる.
ファンタジーともリアルなミステリーともとれる文章で,初読時はまごついたと思う.読み終わってみれば,物理的に説明できるミステリだった.
1990 年の作品.この年 興行的に成功した映画は「ゴースト/ニューヨークの幻」「ホーム・アローン」「プリティ・ウーマン」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」 など.映画の斜陽化は始まっていた.これはブラッドベリが,さらに 40 年近い過去を懐かしんだ作品だろう.
今ではぼくは映画館でほとんど映画を見ることがない. 映画時代に対するノスタルジーを感じれば,このミステリも,ブラッドベリの SF と共通する読後感.
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