井上ひさし,中公文庫(2020/03).
目次*****
一茶をめぐって
エッセイ 一茶をめぐって(一茶との一夜,キク月水)
一茶百句―井上ひさし選
対談 一茶・息吐くように俳諧した人 金子兜太×井上ひさし
講演 小林一茶にみる言葉といのち 金子兜太×井上ひさし
小林一茶
(作者の前口上) 戯曲「小林一茶」 (後口上)
解説 扇田昭彦*****
300ページのうち,戯曲は 2/3 ほど.はじめから順を追って読むと,ミステリの前にネタばらしをされる感がある.しかし戯曲そのものは複雑にして高級で,あとがきの表現を借りれば
「喜劇精神で味付けした伝記劇 + どんでんがえしを仕組んだ推理劇 + 劇中劇を駆使したメタシアター=演劇についての演劇 + 俳句や連句の世界から見た日本論・日本人論 + 痛烈な中央集権批判・消費都市批判 + 俳諧師たちから見た文筆業者の生々しい生態 図」
である.何の予備知識もなく観劇したら,おもしろかったけど何だったの...ということになり,著者の意図を十全に汲み取ることは (16 トン程度の教養では) まず不可能.「完本」の構成は確かに親切かも.
16トンがいちばん楽しんだのは,「参 最上川の歌仙」で,弥太郎こと一茶が吐き出す俳句の数々だった.
思い出が通り過ぎてく雪のまち
悲しみを夜明けのうたが流し去る
槌うちのしばしもやまぬ鍛冶屋かな
上向いて歩めば涙はこぼれまじ
小僧めが木を切るヘイヘイヘイヘイホー
なぜ啼くや烏は山に子があるか
...
まだまだあるので,本を買ってください.
カバー 南伸坊.井上ひさしによる「大きな鼻と長い顎...」という一茶の描写にはあまり似ていない.
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