【社説②】:協調路線のG7 地球規模の課題克服を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:協調路線のG7 地球規模の課題克服を
自由主義諸国が協調を取り戻したことを歓迎する。二年ぶりに首脳が対面して開かれた先進七カ国首脳会議(G7サミット)。気候変動、感染症という地球規模の課題の克服にG7は主導的な役割を果たしてほしい。
G7は新型コロナウイルスのワクチン十億回分を途上国に提供することで合意した。豊かな国ではワクチン接種が進んでいるのに対し、貧しい国の接種率は0・8%にすぎないというデータもあり、極端な不均衡が問題化している。
このワクチン格差を是正するのはG7の責務だ。富裕国がワクチンを独占していては感染は収まらない。感染症のパンデミック(世界的大流行)を防ぐための国際的な態勢強化に向けてもG7は指導力を発揮してほしい。
気候変動問題では、温室効果ガスの削減措置が講じられていない海外の石炭火力発電所への新たな公的支援を年内で打ち切ることで一致した。
一方で、サミット議長国の英国がG7各国に求めていた国内の石炭火力発電所の全廃について、時期まで踏み込めなかったのは物足りない。
日本は二酸化炭素(CO2)の排出量が大きい石炭火力に発電電力量の約三割を頼っている。「脱石炭」に消極的な日本は大局に立たないと国際的な時流から取り残されてしまう。
G7の首脳声明には中国への注文が並んだ。台湾海峡の平和と安定の重要性に初めて言及し、新疆(しんきょう)ウイグル自治区と香港において人権や自由などの尊重を求めた。
だが、中国への対抗姿勢を見せるばかりでは不毛である。国際的な課題解決には中国の協力は不可欠だ。中国との協調・共存を図ることを忘れてはならない。
トランプ前米大統領の米国第一主義によって機能不全に陥ったG7サミットだったが、同盟重視のバイデン大統領の登場によってまずは息を吹き返した。
G7はかつては世界全体のGDP(国内総生産)の七割ほどを占める経済規模を誇った。中国やインドなどの新興国の台頭で今では五割を割り込んでいる。それでも結束すれば大きな影響力を持つ。
圧政にあえぐ国の人々にとっては、G7が価値観として共有する自由や民主主義は希望の星だ。G7には自由な国際秩序を担っていく役割がある。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年06月15日 07:50:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。