【HUNTER2022.08.03】:田川郡内8市町村の首長らが議員勉強会の主催者を“脅迫”
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER2022.08.03】:田川郡内8市町村の首長らが議員勉強会の主催者を“脅迫”
狂った権力が脅迫行為に走り、地方自治の改革に取り組む議員らの活動にストップをかけた。集会や言論の自由を保障した憲法の規定に抵触する可能性が高い。
■前代未聞の脅迫文書
公権力を悪用し、事実上の脅迫で集会や言論に圧力をかけたのは、田川郡内にある8 市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長。田川市、大任町、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町で構成)の市町村長と二人の議員。首長らは連名で、今年4月26日に田川市内で開かれた地方自治に関する勉強会の内容に言いがかりをつけ、主催した3人の議員に対し謝罪と質問への回答を要求している。
勉強会は、田川市の市議が中心となって近隣自治体の議員などに呼びかけ開催したもの。市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事を講師に、約90人が参加して情報公開の重要性についての議論が行われた。当日は、この勉強会に因縁をつけている永原譲二大任町長の子息の建設業者や、永原町長が会長を務める郡町村会の職員が参加していたことが分かっている。
勉強会を主催した小林義憲田川市議会議長と他の2人の議員に、質問状なのか抗議文なのか分からない支離滅裂な文書が送りけられてきたのが7月12日。同封されていたのは下の文書(*赤いアンダーラインはハンター編集部。画像クリックで拡大)で、「田川地域広域行政勉強会の趣旨及びその内容について」は、六つの問題点を列挙した上で「謝罪」を求めるもの、表題なしの方は「その内容について」にある質問事項への「回答」を求める内容となっている。
いずれの文書にも、組合の役員である永原大任町長、二場公人田川市長、原口正弘川崎町長、寺西明男添田町長、道廣幸赤村長、森下博輝糸田町、黒土孝司福智町長、鶴我繁和香春町長、田中良幸大任町議、畠田勝廣添田町議が押印している。
田川地域広域行政勉強会開催の趣旨及びその内容について
令和4年4月26日の田川地域広域行政勉強会を小林義憲田川市議会議長を発起人として、市民オンブズマン福岡代表幹事児嶋研二氏を招いて実施されました。
この勉強会への参加呼びかけを小林義憲議長らが自ら行い、特定の田川地域市町村議員及び特定の住民、マスコミ(新聞記者及びTV局)に案内し、田川地域から28名の議員が参加し、田川市議会からは14名が参加されました。
(*①)市民オンブズマン福岡代表幹事の児嶋研二氏との一般的な勉強会ではなく、広域行政勉強会とは名ばかりで、実際は田川郡東部環境衛生施設組合が大任町で建設している当該事業の情報公開や事業費用を批判するものに外なりません。
(*②)福岡在住の児嶋代表が大任町に建設中の当該施設について、知る由もなくこの勉強会に先立って、(*③)誤った内容が、事前に説明したのではないかと想定されます。
先に完成した田川クリーンセンターやごみ焼却施設、最終処分場については、構成市町村議会の厳格な審議を経て、地方自治法に基づく議決をいただき、大任町へ事務委託され、実施されていることは、貴職も十分承知のとおりであります。
財政基盤の脆弱な田川地域にとって、有効な財源確保を行い構成市町村が負担する費用を最小限とするため、中央省庁や上級官庁への不断の努力を重ね、出来るだけ地方負担の軽減に努めて事業を推進し、議会等で機会あるごとに財政状況や進捗状況を説明しているにもかかわらず、あたかも、大任町のみが単独でかつ不純な利益を得て、事業を進めているかのような誤った認識を住民に持たせ、RKB毎日放送の報道の中でも、同様の内容が放送され、著しい疑惑があるような印象操作が行われたことは、誠に遺憾であり、看過することはできません。
田川市議会議員という重責にあり、当該事業を円滑に進める職責を担う立場にあるにもかかわらず、勉強会の司会者として主体的に進めたことは、看過できるものではありません。
よって、田川郡東部環境衛生施設組合、組合長、副組合長、議会議長及び議会副議長連名のうえ、当組合並びに議会の総意をもって、下記のとおり抗議する。
記
1 当該勉強会を実施するにあたり、発起人らは、特定の同志を中心に呼びかけ不正の念を抱かせるような活動は、田川市議会議員としてあるべき態度なのか疑いを禁じ得ない。また、関係議員らが児嶋代表幹事に対して、事実に基づかないうそや思い込みの情報を提供したのではないかということ。
2 大任町内における、いわゆる迷惑施設について発起人らは、大任町民の心情を全く理解しようとしてないこと。
3 (*④)施設建設に係る情報公開について、大任町が情報公開条例の一部を改正した経緯や背景を全く理解してないこと。
4 地方自治法で定められた一部事務組合と言う特別地方公共団体の法制の趣旨、当該組合の規約等を全く理解してないこと。
5 当該事業を推進するにあたって、構成市町村の厳格な討論の後、議会議決を経たにも関わらず、事業費用及び事業推進について、当議会行政報告において機会あるごとに報告しているにもかかわらず、総工事費がどれだけ増大するかわからないというような理不尽な発言に対して、田川市議会議員として、当該事業を全く理解しておらず、田川市議会で審議を尽くされたにもかかわらず、その発言を見過ごしたことは、当該勉強会の司会者として、また、職員として、怠惰と言わざるを得ない。
6 地域住民から信託された議会議員という立場を忘れ、テレビ報道やネットニュース、SNS、ユーチューブ配信と言った報道姿勢を煽り、議員としての職責を全く疑わざるを得ないこと。
以上のことについて、厳重に抗議するとともに、令和4年7月31日までに文書をもって謝罪することを求めるものであります。
さもなくば、この事業が遂行できなくなる恐れがあります。
まず、「田川地域広域行政勉強会の趣旨及びその内容について」だが、(①)“実際は田川郡東部環境衛生施設組合が大任町で建設している当該事業の情報公開や事業費用を批判するものに外なりません”という一文からして、完全な言いがかり。勉強会は「情報公開」の重要性について議論する内容で、田川郡東部環境衛生施設組合の事業を批判したり検証したりするための集まりではない。
勉強会開催のきっかけとなったのは、ハンターが報じてきた田川市や大任町による情報公開制度の恣意的運用だ。田川市は、他の自治体が当たり前のように開示する文書を非開示にしたりするなど隠蔽姿勢むき出し。審査請求で非開示決定の取り消しが答申されるなど不始末が続いており、問題視されてきたごみ収集運搬の業者選定プロポーザルを巡っては、疑惑が深まったとして100条委員会の設置が決まっている。
大任町に至っては、情報公開条例があっても実質的には無いような状況。ハンターが町発注の工事の関連文書を精査しようと情報公開請求を重ねていた昨年9月、「何人も、この条例の定めるところにより、実施機関に対し、当該実施機関が保有する公文書の開示を請求することができる」となっていた条文を改悪し、「何人も」を「町の区域内に住所を有する者(請求日から起案して1年以上住所を有する者に限る)」に変えている。
ただし、公共工事関連文書については町外だけでなく、町内からの開示請求にも応じておらず、町議会議員が請求した田川郡東部環境衛生施設組合の施設建設に関する文書は、すべて非開示。情報公開条例は、有名無実となっている。
こうした状況に危機感を抱いた地方議員らが開いた勉強会が、権力者たちの圧力で潰されていいはずがない。改めて勉強会の内容を確認してみたが、参加者が「田川郡東部環境衛生施設組合」やその事業について言及した場面はなく、児嶋代表幹事の発言も、情報公開についての一般論か他の自治体のケースを挙げての提言に過ぎなかった。
抗議文に名を連ねた8人の首長と二人の議員は、勉強会の詳細な内容を確認せぬまま、押印した可能性がある。
◇ ◇ ◇
次に、(②)“福岡在住の児嶋代表が大任町に建設中の当該施設について、知る由もなく”について。
前述したように、勉強会の中で児嶋代表幹事は、田川郡東部環境衛生施設組合が整備する施設について具体的な言及をしていない。同氏が知っていたのは、情報公開条例を恣意的に運用してきた田川市や大任町の実態であって、だからこそ情報公開の必要性について議論する勉強会の講師を引き受けたのだ。そもそも、建設工事を発注した大任町は関連情報の開示を拒んでおり、「知る由もなく」が事実だとすれば、それは大任町の責任だろう。
“知る由もなく”に続く(③)「誤った内容が、事前に説明したのではないかと想定されます」は、日本語になっておらず、これほど酷い文面が公文書として発出されたことに呆れるしかない。どうやったら「誤った内容」が「事前に説明する」のか?
◇ ◇ ◇
(④)抗議だか質問だか分からない6項目の中の3番目にあるのが、“施設建設に係る情報公開について、大任町が情報公開条例の一部を改正した経緯や背景を全く理解してないこと”という一文。永原町政が情報公開条例を改正した顛末は述べてきたとおりだが、その際、提出された議案の提案理由は、下に示した「町が保有する公文書の開示について、町政に関する町民の「知る権利」を保障する本条例の目的に鑑み、開示請求権の所在を明確にするため、所要の改正を行うものである」という、訳の分からないもの。“経緯や背景を全く理解してない”と難癖をつけているが、議会で説明もされていない“経緯や背景”を、第三者が理解できるわけがない。
◇ ◇ ◇
最も悪質なのは、最後の一行。“さもなくば、この事業が遂行できなくなる恐れがあります”は、明らかに脅迫だ。「さもなくば」という言葉自体、公文書で使う性質のものではなく、要は『謝らなければ事業の遂行ができなくなるぞ』という脅しに他ならない。
質問書にあたるもう1枚の文書も、最後は「脅迫」となっている。
令和4年4月26日に貴職が発起人となって開催された第1回田川地域広域行政に関する勉強会について、田川郡東部環境衛生施設組合議会、全員協議会において、田川市議会議員3名に対し、開催を主催したことについて、当組合並びに当組合議会の総意をもって抗議する旨の決議がなされました。
よって、当組合長、副組合長、議長及び副議長の連名で抗議し、謝罪を求める文書を貴市議会議員3名に対し、発出したので、速やかに回答されるように促すとともに、主催者たる貴職が、田川市議会の代表者としての議長という立場を利用して、田川市及び田川市議会の総意のうえで、特定の田川地域市町村議員及び特定の住民、マスコミ(新聞記者及びTV局)に案内し、田川地域広域行政に関する勉強会が開催されたものなのか、令和4年7月31日までに文書をもって回答を求めます。
期日までに回答がない場合は、事業が遂行できなくなる恐れがあります。
“期日までに回答がない場合は、事業が遂行できなくなる恐れがあります”――。地方議員らの勉強会が気に入らないというだけで、「事業を止めるぞ」と言わんばかりの強要行為だ。チンピラヤクザ並みの言いがかりに基づく脅迫が、「公文書」で行われたことは、田川郡内の地方自治が大きく歪んでいることの証(あかし)だろう。
日本国憲法は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」(第21条)と定めており、勉強会の主催者に圧力をかけた田川郡内8市町村の首長らの行為は、この規定に反する可能性が高い。
ところで、この脅迫行為を主導した人物以外の首長たちが、本当に田川郡東部環境衛生施設組合が整備を進める施設の建設費や工事内容について理解しているとは思えない。いや、理解できるわけがないのだ。次稿で、それを証明する。(つづく)
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・地方自治・公権力を悪用し、事実上の脅迫で集会や言論に圧力をかけたのは、田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長。田川市、大任町、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町で構成)の市町村長と二人の議員】 2022年08月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。