【 週刊誌からみた「ニッポンの後退」】:岸田首相が安倍晋三氏の死を機に豹変のナゼ…“お手本は”中曽根康弘元首相か?
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【 週刊誌からみた「ニッポンの後退」】:岸田首相が安倍晋三氏の死を機に豹変のナゼ…“お手本は”中曽根康弘元首相か?
「バカは隣の火事より怖い」「When pigs fly」
立川談志がよく言っていた。岸田文雄首相を見ていると、なぜか、この言葉を思い出す。
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岸田首相と安倍元首相(C)日刊ゲンダイ
突然、岸田首相は新型コロナウイルス患者の全数把握を見直せ、各自治体で判断しろと表明した。だが、自治体から猛反発を受けて方向転換せざるを得なくなった。第7波で感染者が激増しても何の対策もとらなかったのに、突然の世まい言。
もっと驚いたのが、電力事情逼迫(ひっぱく)やウクライナ戦争を理由に、原発の新増設や運転期間延長の検討を“決断”したことである。原爆被災地・広島の首相だというのに、原発を新しくつくるというのだ。それも議論を尽くしたとは到底思えない唐突で浅はかな大転換である。
内閣改造はしたが、蓋を開けてみれば“統一教会汚染内閣”といわれるほど、多くの閣僚や党の要職者が、教会と強いつながりがあることが明るみに出てしまった。さらに、岸田首相の熊本後援会長が、統一教会が推進している「日韓トンネル推進熊本県民会議」の議長をやっていたことも週刊文春(9月1日号)で報じられた。東京五輪をめぐる贈収賄事件で高橋治之元電通専務が逮捕され、森喜朗組織委会長(当時)をはじめ自民党議員の名前も取りざたされている。
朝日新聞(8月29日付)の世論調査で内閣支持率が47%になった。統一教会問題で岸田政権を評価しないが65%、評価するは21%。国葬については反対が50%、賛成41%。国民の岸田政権離れが激しい。
国民の声を聞くしか取りえがないと思われていた首相が、安倍元首相の死を機に、決断できる首相に“大変身”したかに見えるのはなぜか。
評論家の田原総一朗はサンデー毎日(9月4日号)で、「国内の支持率が低くなると、みなタカ派になる。ジョンソン英国首相、バイデン米大統領がそうだ」といっている。
◆昔から平凡で中身のない首相がやることは、誰かのサル真似
2011年10月21日号の週刊朝日は、当時、野党だった自民党の国対委員長になった岸田をこう評している。「岸田さんは政調会長代理レベルの知名度で、テレビ映えもしない。得意なのは、中身のない、長い挨拶ぐらいですよ」。田原もサンデー毎日で「平凡な男だ。首相になったらこれをやりたいというものもない」と言っている。
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昔から、平凡で中身のない首相がやることは、誰かのサル真似をすると決まっている。中曽根康弘元首相は若い頃から、自分が首相になったらやることをノートに書き留めていた。岸田も昔からノートをつけていた。それほど高尚なものではないと自ら言っているが、中曽根をひそかにお手本にしていたのだろう。
中曽根が念願の首相になった時、「田中曽根内閣」とヤユされたように、田中角栄のカイライ政権だった。だが、田中が脳梗塞で倒れると、国鉄分割民営化をやり遂げ、日本の労働運動を窒息させてしまった。
岸田も、安倍がいる時は「安岸内閣」だと陰日なたで言われた。だがその安倍はいない。安倍がやれなかった原発推進、憲法改正をオレの手でやる。コロナに罹患(りかん)して怯えながら岸田はそう考えたのではないか。それとも、岸田の枕元に安倍の霊が現れ、「これだけはやれ」と岸田に迫ったのだろうか。談志の言葉をいま一度読み直してほしい。(文中敬称略)
(「週刊現代」「週刊フライデー」元編集長・元木昌彦)
元稿:日刊ゲンダイ DIGITAL 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・話題・連載「週刊誌からみた「ニッポンの後退」」】 2022年09月04日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。