【社説②】:北ミサイル発射 日米韓連携で抑止力強化急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:北ミサイル発射 日米韓連携で抑止力強化急げ
北朝鮮が、日本海に向けて再び弾道ミサイルを発射した。日米韓3か国は連携を強化し、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を抑止する態勢づくりを急がねばならない。
北朝鮮西岸付近から15日夜、東方向に少なくとも2発の弾道ミサイルが発射された。防衛省によると、2発の飛行距離は約850~900キロ・メートルで、いずれも日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。
近くの海域では、鳥取県所属のベニズワイガニのカニかご漁船が操業中だった。乗組員は、「何かが落ちた大きな音を聞いた」という。ミサイルが落下した際の音だったのではないか。
国民の生命が危険にさらされ、一歩間違えれば大惨事になっていた。漁業者らの安全を脅かし、地域と世界の安定を揺るがす行為は断じて容認できない。
国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議は、弾道ミサイルの発射を禁じている。岸田首相が「国際社会全体への挑発をエスカレートさせる暴挙だ」と、強く非難したのは当然である。
今回発射されたミサイルは、既存の防衛システムでは迎撃が難しい変則軌道で飛行したとみられている。夜間発射と合わせ、ミサイルの技術・性能の向上や臨戦態勢を誇示し、日米韓を 牽制 する意図があったのだろう。
米韓両軍が15日まで、韓国と北朝鮮の軍事境界線付近で大規模な合同訓練を実施したのに対し、北朝鮮国防省は「徹底的に対応する」との談話も出していた。
北朝鮮は5月末に、「軍事偵察衛星打ち上げ」に失敗した後、再度実施すると明言している。今度は打ち上げ期間やロケットの落下海域を事前に通告しない可能性があるという。言語道断だ。
浜田防衛相は、自衛隊に発令していた破壊措置命令を延長した。国民の安全を守るため、万全の態勢をとってもらいたい。
日米韓の高官は、今回の発射を受け、「日米韓の協力が挑発によって揺らぐことはない」とする共同声明を出した。
北朝鮮は、米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「完成」を宣言済みだ。韓国などを標的とする戦術核兵器の開発も進めている。
北朝鮮に対する日米韓の脅威認識を一致させ、対処していくことが重要だ。北朝鮮のミサイル情報の即時共有態勢を早期に構築し、3か国の共同訓練も拡充して、抑止力を向上させる必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年06月17日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。