【社説】:骨太方針 財源論議の先送り改めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:骨太方針 財源論議の先送り改めよ
国民負担の議論から逃げてばかりではないか。岸田文雄首相は重要政策に必要な財源の先送りを改めるべきだ。
巨額の借金を抱える日本の財政は主要国で最悪である。必要なときには増税を含む財源確保策を国民に示し、広く理解を求めるのが政治の責任であるはずだ。
政府は当面の経済財政運営の指針となる骨太方針をまとめた。多額の予算を必要とする施策が並んでいるものの、実現の裏付けとなる財源がはっきりしない。
少子化対策はその典型だ。首相は年頭の記者会見で、子ども関連予算の倍増に向け、骨太方針の決定までに大枠を示すと表明していた。
今月公表した「こども未来戦略方針」は、2024年度から3年間に年3兆円台半ばを費やし、児童手当を拡充することなどを打ち出した。財源は歳出改革や新設する支援金制度が挙がる。 歳出改革は防衛費増額の財源でもあるが、何を削るのかは明らかでない。支援金制度にしても、社会保険料の上乗せが想定されるだけで規模は判然としない。
いずれも現時点では安定財源と呼べない。
一方で首相は消費税を含む増税をきっぱりと否定する。少子化対策を発表した先日の記者会見でも「国民に実質的な追加負担を求めることなく進める」と強調した。衆院解散を視野に、国民に負担増を求めるのは得策ではないと判断したようにみえる。
経済界は社会保障財源として、消費税を含む新たな税負担の検討を求めている。消費税は年金、社会保障、少子化の政策経費に充てると法律に明記されている。
歳出改革を進めるのは当然だが、それだけでまとまった財源を確保できるのか。賛否両論があっても、増税を選択肢から外すのは早計だろう。
政府の全世代型社会保障構築会議は、昨年12月の報告書で「恒久的な施策には恒久的な財源が必要」と記した。少子化対策や社会保障には、やはり安定財源が欠かせない。
財源が不透明なのは、5年間で総額約43兆円に増やす防衛費も同じである。
予算の一部は増税で賄う。その時期は24年以降としていたが、自民党の提案を受けて25年以降への先送りをにじませる書きぶりに変わった。
骨太方針には他にも気がかりな記述がある。 「予算の単年度主義の弊害是正」を名目に、多年度にわたる重要政策課題に基金で対応するという。基金を活用した事業は監視の目が届きにくく、無駄遣いが繰り返されてきた。安易な歳出拡大を防ぐ手だてが必要だ。
財政健全化については「これまでの健全化目標に取り組む」としたものの、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を25年度に黒字化する政府目標の記載は見送った。
危機的財政を立て直す決意は伝わってこない。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】 2023年06月18日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。