【筆洗】:中学生の時に失明したという佐木理人(あやと)さんは、四十代…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:中学生の時に失明したという佐木理人(あやと)さんは、四十代…
中学生の時に失明したという佐木理人(あやと)さんは、四十代の点字新聞の記者。白杖(はくじょう)を使って通勤している。大改修が進む大阪・梅田の地下街の一角で立ち止まり、移された点字ブロックを探す体験をつづった記事を先月、毎日新聞で読んだ
▼「落ち着こうと、大きく深呼吸する。つえ先を慎重に右左に動かし、工事で張り替えられた点字ブロックを見つけ、会社にたどり着く」。知らない道を歩く時は緊張するようで、こう続く。「一人で初めて訪れる取材先への道では、足裏に点字ブロックの突起を感じると、ほっとする」
▼奈良県内の近鉄の踏切で先日、目の不自由な女性(50)が電車と接触して死亡した。近くで白杖と全盲を示す障害者手帳が見つかり、踏切があることを警告する手前の点字ブロックは一部が欠損していた。経年劣化ではがれた可能性があるという
▼付近の防犯カメラに、踏切を横断中に遮断機が下り始め、立ち止まる姿が写っていたという。踏切と知らずに立ち入ったのだろうか。胸が締めつけられる
▼点字ブロックは岡山の男性が考案し、一九六七年に地元の盲学校近くの交差点に初めて設置された。各地に広がったが、点字ブロック上の駐車、駐輪、立て看板設置などは絶えず、障害者がぶつかることもある
▼誕生から半世紀が過ぎた「道標」への理解は十分なのだろうか。まただれかを傷つけてはいけない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】 2022年04月29日 06:55:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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