【社説・01.04】:熟議の政治へ 国会の古い慣行を見直せ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.04】:熟議の政治へ 国会の古い慣行を見直せ
衆院が少数与党となり、野党の賛同を得ないと予算案や法案が通らない。与野党が合意点を見いだすまで議論を重ねる「熟議」を定着させる年にしたい。
越年した「政治とカネ」の問題は、これ以上決着を先送りしてはならない。
2025年度予算案を巡る与野党の攻防は様変わりするだろう。見据えるのは夏の参院選だ。石破茂首相にとっては政権の存立に関わる正念場となる。
■最大の決戦は参院選
自民党派閥の裏金事件に端を発した政治資金問題は、先の臨時国会で政策活動費を廃止するなど一定の成果が見られた。
少数与党の現実は重い。野党案に反対していた自民党も最後は折れるしかなかった。
今月下旬に始まる通常国会でも引き続き重要なテーマとなる。焦点は企業・団体献金だ。禁止を求める立憲民主党などの野党と、存続を訴える自民との溝は深い。
与野党は3月末までに結論を出すことに合意している。過去の事件や疑惑を見れば、全ての企業・団体献金が浄財だとは言えない。政治をゆがませる可能性がある以上、禁止すべきだ。
政治資金の収入が減れば、政治活動ができないと主張する議員がいる。この際、政治にはカネがかかるのか、必要以上にかけているのかを国民に明らかにして、政治資金の在り方を根本から見直してはどうか。
政治資金の集め方、支出の範囲を規定し、それらの実績は全て公開する。国民がチェックできる仕組みを整えたい。
一連の改革を通じて、長年の課題である「カネをかけない政治」が実現すれば、国民の政治を見る目も変わるはずだ。
裏金事件の解明も急ぎたい。旧安倍派の幹部や会計責任者らを参考人招致し、さらに証人喚問で、意思決定の過程や裏金の目的などを明らかにする必要がある。
政治資金問題が長期化すれば、参院選への影響が大きくなる。昨年の衆院選のように結果を大きく左右する要因になり得る。
立民などの野党は政権交代へ弾みをつけたいところだ。改選1人区で候補者を調整し、与党との一騎打ちに持ち込めるかが勝敗の鍵となる。
与党は参院で過半数を維持することが最低限の目標だ。
石破首相は昨年暮れ、内閣不信任決議案が可決された場合、衆院解散に踏み切る可能性に言及し、早くもけん制している。
■通年会期制の検討を
当初予算案を採決する日程が視野に入る2月後半から、与野党の駆け引きは熱を帯びそうだ。
与党と野党が個別に交渉し、野党の政策実現と引き換えに、予算案への賛成を取り付ける可能性がある。これを繰り返していては、真の予算案審議にならない。
野党は予算案の内容を精査し、修正の必要性と賛否を判断する。与党は野党の修正案が妥当なら、柔軟に取り入れる。財源にも責任を持たなくてはならない。与野党共に、政策決定過程が国民に見える国会運営に努めてほしい。
立民は通常国会に選択的夫婦別姓制度の法案を提出する構えだ。大半の野党は導入に前向きなのに対し、自民は党内に強硬に反対する議員を抱える。
首相は通常国会の大きな論点となることを見越して「党として議論の頻度を上げ、熟度を高めることに力を入れる」と述べた。その言葉通り、党や国会で徹底して話し合い、結論を出してほしい。
議論に十分な時間をかけられるように通年国会を導入するなど、熟議の国会に見合う制度を検討してはどうか。
通常国会は1月に開会し、会期は150日と決まっている。法案審議が始まるのは例年、予算成立後の4月からだ。会期は1度だけ延長できるが、参院選の年は大幅な延長が難しい。通年国会なら会期末を気にせずに議論できる。
政治資金や法案審議をはじめ、国会の古い慣行を変える転機となることを望む。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月04日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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