《余録・12.07》:「軍国重大なる時機において汽車不通を生じ…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.07》:「軍国重大なる時機において汽車不通を生じ…
「軍国重大なる時機において汽車不通を生じ、輸送力に対する影響甚大なる」「各種軍需工場の破壊を伴い生産力上の障害大」。戦時中の中央気象台報告書が記すのは1944年12月7日に静岡や愛知、三重などを襲った昭和東南海地震だ
▲関東大震災と同規模。建物の倒壊や津波で1200人以上が犠牲になったが、報道は厳しく統制された。軍需工場を標的にした米軍の空襲も始まっていた。戦争遂行能力に影響が出たことは極秘だった
▲多くの動員学徒が犠牲になった「隠された地震」は貴重なデータも残した。関東大震災の「予知」で知られる今村明恒(いまむら・あきつね)博士の提言で陸軍が静岡で測量を実施し、地震前日や当日の地殻変動が記録されていた
▲博士は幕末に南海トラフで続けて起きた安政の巨大地震から90年たち警戒を高めていたという。地震後には歴史に照らし南海での地震に警鐘を鳴らした。津波などで多くの犠牲を出した昭和南海地震の発生は2年後の46年12月だった
▲昭和東南海地震からきょうで80年。今年は能登半島地震で始まり、8月の日向灘地震では初の「南海トラフ地震臨時情報」が出された。昨年関東大震災100年を迎え、首都直下地震にも警戒が必要だ
▲大地震の周期性に着目し観測態勢の強化を求めた先達の先見性は今の地震対策にも生かされている。地震は制御できない自然現象だが、震災は人間の英知で防止できる。博士は繰り返し訴えていたという。そんな箴言(しんげん)を思えば、防災体制の一層の整備が怠れない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2024年12月07日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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