【社説②・02.06】:備蓄米制度 価格安定へ放出判断を迅速に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.06】:備蓄米制度 価格安定へ放出判断を迅速に
主食であるコメの価格高騰が長引き、家計を苦しめている。政府は、備蓄米を効果的に放出し、早期に価格の安定を図ってもらいたい。
農林水産省は、備蓄米を放出する際の運用方針を見直した。これまでは凶作時などに限定していたが、円滑な流通に支障が出た場合でも放出できるようにした。
1年以内の買い戻しを条件に、全国農業協同組合連合会(JA全農)などに売り渡す。具体的な放出の時期や規模は未定という。
昨夏以降、コメの値上がりが鮮明になった。だが、農水省は、凶作ではなく需給は 逼迫 していないとして、備蓄米を放出する状況にはないと説明してきた。
国民負担の重さを考えれば、放出ルールの柔軟化は当然で、むしろ遅すぎたと言える。政府は、迅速に放出時期を見極めて、国民負担を和らげることが大切だ。
国の備蓄米制度が出来たのは、歴史的な凶作となった1990年代の「平成の米騒動」がきっかけだ。10年に1度の凶作や2年連続の不作に対応できるように、100万トン程度を備蓄している。
主食用米の年間消費量は700万トン程度で、備蓄米による価格抑制の余地は大きい。
農水省が備蓄米の活用をためらっていたのは、長年のコメ農政も背景にあるのではないか。
政府は、生産者の所得安定を目的に、1970年代から実施した減反政策で過剰生産を抑制し、価格が下がりすぎないよう腐心してきた。2018年に減反制度を廃止したが、今も転作に補助金を出し、生産を調整している。
生産者に配慮するあまり、価格の下落ばかりを恐れ、消費者目線を欠いたと言わざるを得ない。
24年産米の生産量は増えたが、農水省の予測とは異なり、高値は収まっていない。価格高騰を受け、外食や卸売、小売業者などが、早めに在庫を確保する動きが広がったためだと指摘される。
農水省の対応が後手に回った結果、流通関係者の不安を招き、品不足に拍車をかけた面もある。
農水省は、JAなどの大手集荷業者や大規模な卸業者以外にも、在庫状況の調査範囲を広げるという。備蓄米の放出に加え、必要以上に在庫を抱える動きを防ぐ正確な情報発信も重要になる。
今回の価格高騰は、猛暑による不作や訪日客の需要増などによって、過度な価格変動が生じるリスクが増えていることも浮き彫りにした。コメの生産基盤を強化する策を考える契機ともすべきだ。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月06日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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