【社説②・10.27】:イスラエル報復 中東の2大国に自制を求める
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・10.27】:イスラエル報復 中東の2大国に自制を求める
イスラエルがイランの軍事施設を攻撃した。中東の軍事大国同士による報復の連鎖がこれ以上続けば、全面紛争に陥りかねない。全ての当事者に自制を強く求める。
首都テヘランの基地やミサイル製造拠点など複数の施設が標的となった。攻撃は1日で終了した。イランが今月初めにイスラエルを180発以上のミサイルで攻撃したことへの報復とみられる。
石油や核開発に関連する施設は攻撃対象から外し、一定の抑制を働かせた。だが、イラン当局者は「相応の反応を受けるだろう」と述べ、新たな報復を警告した。
攻撃合戦に終止符を打ち、事態が沈静化に向かうようにしなければならない。まずは、パレスチナ自治区ガザをめぐる、イスラエルとイスラム主義組織ハマスの停戦を急ぐ必要がある。
米国、カタールなどを仲介役とする停戦協議が近く再開される動きが出ている。今度こそ合意にこぎ着けなければならない。仲介国には双方への働きかけをさらに強めてもらいたい。
昨年10月にハマスがイスラエルに越境攻撃を行って以降、イスラエルはハマス 殲滅 を目標にガザで無差別攻撃を続けている。攻撃は自衛の範囲をはるかに超え、ガザでは子どもや女性を含む4万2000人以上が死亡している。
イスラエルはハマスに連帯するイスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点とするレバノンにも侵攻し、1000人以上の命が奪われている。これに加えて、イランとも本格的に戦端を開く事態となれば、戦火は中東全体に及ぶ。
さらに戦線を拡大するような無謀は慎まなければならない。
イスラエルの後ろ盾である米国は、自制を求める国際社会の呼びかけにネタニヤフ政権が応じなければ、ガザやレバノンなどへの攻撃に使われる兵器の供与停止に踏み切るべきだ。
イランがハマスを支持し、ヒズボラに軍事支援を与えるなど、反イスラエル勢力を後押ししていることが、イスラエルに過剰な攻撃の口実を与えていることは否めない。地域大国としての責任ある振る舞いを求めたい。
中東危機と並び、国際社会の安定を脅かしているロシアのウクライナ侵略では、北朝鮮がロシア側に兵士を派遣し、アジアを巻き込んだ紛争の様相を呈している。
世界で同時並行で進んでいる二つの危機がともに拡大し、事態収拾が一層困難になりつつある現状を深く憂慮する。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月27日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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