【社説①・11.05】:BRICS拡大 「二つの世界」に戻すな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.05】:BRICS拡大 「二つの世界」に戻すな
主要新興国グループ「BRICS」首脳会議がロシア中部カザンで開かれた。議長国ロシアと中国はグループの再拡大を呼びかけ、先進7カ国(G7)に対抗する姿勢をあらためて明確にした。東西冷戦時代のような「二つの世界」に逆戻りしてはならない。
新興5カ国で構成するBRICSは1月、イランとエジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦(UAE)が加わり9カ国体制になった。さらに今回の会議ではアジアやアフリカなどグローバルサウス(新興・途上国)の13カ国を「パートナー国」として迎えることを決め、一層の組織拡大を図る。
BRICSは2008年の金融危機を機に発足した協議体。政治的に一枚岩でなく、中ロがG7主導の世界秩序に異を唱える一方、バランス外交重視のインドやブラジルは日米欧との協力も続ける。
しかし、22年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、中ロは国連安全保障理事会での連携を強化。国際的な孤立を避けるため、グローバルサウスを取り込む動きを加速させ、BRICS本来の目的からは逸脱しつつある。
ロシアのプーチン大統領は会見で「BRICSは価値観を共有する国に開かれている」、中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席は会議で「世界は新冷戦の危機にある」と強調し、「非欧米陣営」の結集を求めた。
中ロが主導して01年に創設した上海協力機構(SCO)も集団安保機関に変質しつつある。中央アジア各国との安保協力が、パキスタンやイランにも拡大されて合同軍事演習を重ねている。
一方、米欧の北大西洋条約機構(NATO)はBRICS会議直前に開いた国防相理事会に日本と韓国、オーストラリア、ニュージーランドの国防相を招き、G7初の国防相会合では、中ロに対抗することを確認した。
G7とBRICSが互いを敵視し、世界を再び分断させてはならない。先進国が主導した地球的な経済の循環は新興国や途上国の発展を助け、先進国もその恩恵にあずかってきた。そのことをお互いに忘れるべきではない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月05日 06:50:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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