【社説・11.23】:自民の政治改革案 国民が納得する中身なのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.23】:自民の政治改革案 国民が納得する中身なのか
自民党の政治改革本部が、臨時国会で想定される政治資金規正法の再改正に向けた基本方針を示した。派閥パーティー券裏金事件をはじめ「政治とカネ」の問題に後ろ向きな姿勢が批判を浴び、衆院選で大敗したのを受けた。
一見、反省して踏み込んだようにも見える。何より「裏金の温床」と見る野党や、連立相手の公明党が問題視する政策活動費について廃止をようやく打ち出したことだ。政党から政治家個人に支出され、使途が示されないままブラックボックスとなる政治資金だけに廃止は当然だ。
ただ全体で見れば、小手先のカードを渋々切った感は拭えない。例えば公民権停止となる事件で起訴された議員分の政党交付金を停止することは法律うんぬん以前に即刻、返上すべき話だろう。肝心の政策活動費にしても、外交や企業の秘密に関わる資金は非公表の支出があり得るとしている。最初から抜け穴を考えているように読み取れる。
要はチェックの目はできるだけ緩くしたいのだろう。政治資金を監視する第三者機関については「国会に置くことを基本」とした。国家行政組織法に基づく独立性の高い機関を公明が求めることに一定の配慮はしたようだが、石破茂首相が早期の設置を公言した今に至っても、具体的な組織の姿が曖昧なのは困る。
自民はこの基本方針をベースに与野党協議に入り、規正法改正の内容を事前に固めたいようだ。ほかには、国会議員に月100万円を支給する調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や残金返納を義務付ける歳費法などの改正で与野党が一致している。臨時国会では審議を極力省いてこれらを成立させ、年内に一連の問題に区切りをつけたい―。そんな政権の思惑が透けて見える。
それで国民の納得が得られるかどうか。事前の折衝は必要としても国会での開かれた議論はやはり欠かせない。
自民が基本方針では踏み込まなかった企業・団体献金の問題は避けて通れまい。立憲民主党、日本維新の会などが禁止を唱えるのに対し、自民は容認の姿勢を変えようとしない。何らかの規制強化を与党が示す可能性はあるが、長年の問題点に手を付けるべきだろう。お金のある企業や団体ほど献金を通じて政治への影響力を強め、彼らに有利な方向に国の政策がゆがめられかねないことだ。
その点は裏金問題の本丸である政治資金パーティー券にも通じる。企業などからの献金の抜け道と指摘されて久しい。ことしの通常国会における規正法改正では、購入者の公表基準を20万円超から5万円超に下げるにとどまった。自民は新たな方針として外国人と外国法人による購入の禁止を掲げたが、本質的な見直しに今こそ踏み出したい。
仮に年内に規正法を再改正すれば1年に2回という異常事態となる。自公両党が一部の野党を抱き込んで成立はするが中身は乏しい。そんな結果を繰り返すなら政治不信の解消どころか、与党へのさらなる逆風を招くだろう。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月23日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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