《社説①》:ODAの大綱改定 目先にとらわれぬ構想を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:ODAの大綱改定 目先にとらわれぬ構想を
途上国の開発協力を日本として積極的に進め、国際秩序の安定につなげる構想が必要だ。
政府開発援助(ODA)の指針である「開発協力大綱」が来年、8年ぶりに改定される。
2015年に改定された現大綱は、中国の台頭を念頭に、安倍政権の積極的平和主義のもと国益重視の姿勢を鮮明にした。
軍事的用途や国際紛争を助長するような使用を回避する原則は維持しながら、従来認めてこなかった他国軍への支援を解禁した。民生目的、災害救助、海洋安全保障協力などが対象だ。
今回は、非軍事原則を踏襲しつつ、バージョンアップを目指すという。
法の支配の普及などを掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想のもと、ODAをテコに民間マネーを呼び込み「質の高いインフラ投資」を実現する。途上国の経済成長を日本企業の利益にもつなげる。
こうした国益重視の姿勢が一層強まる可能性がある。
税金が使われる以上、国益を考慮するのは理解できる。だが目先の利益にとらわれ過ぎたり、安全保障分野に偏ったりすることは避けなければならない。
軍事転用されることがないようチェック体制の強化が不可欠だ。
昨年2月に軍事クーデターが起きたミャンマーでは、日本のODAが国軍の資金源になっているとの懸念が出ている。
フィリピンへの自衛隊機材の供与は、防災協力が目的だが、開発協力と安全保障の境があいまいになりかねない。
外務省は、供与時に相手国から「目的外使用をしない」との約束を取り付け、事後点検もしていると説明するが、不十分だ。
ロシアのウクライナ侵攻による食料・エネルギー危機は途上国を直撃し、コロナ禍で保健医療体制の遅れも浮き彫りになった。民生支援を強化する必要がある。
日本のODA予算は1997年度をピークに減り、22年度は当時の約半額の5612億円に落ち込んだ。予算の拡充も課題だ。
ODAを有効に活用することが、途上国だけでなく、ひいては日本のためにもなる。国民の理解を深める努力が一層求められる。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年12月07日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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