【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.13】:デブリ取り出し 廃炉への長い道のりの一歩だ
福島第一原子力発電所の廃炉は、困難で長い道のりになる。政府と東京電力は、廃炉をやり遂げるという強い決意をもって、着実に作業を進めなければならない。
東電は、福島第一原発2号機から、溶け落ちた核燃料(デブリ)を採取した。デブリの回収は、原発事故から13年半を経て初めてとなる。この先数十年続く廃炉作業は、最難関とされる工程の入り口に差しかかったばかりだ。
当初、東電は8月に作業を始める予定だった。しかし、取り出し装置を原子炉内に押し込むパイプの接続順が間違っていることが判明し、出だしからつまずいた。
その後、東電は9月に作業を再開したが、今度は途中でカメラが映らなくなり、中断を余儀なくされた。高い放射線量の下で、電気回路に異常が生じたことが原因だと推定されている。
廃炉の現場で安定して作業を進めることの難しさがあらわになったと言えよう。
福島第一原発の廃炉は、世界でも例のない挑戦で、今後も未知の障害に見舞われることは避けられないだろう。廃炉作業には、東電のほか、関係メーカーや下請け企業などの協力も欠かせない。
複雑なプロジェクトを統括するため、東電はこれまでの失敗から教訓をくみ取り、管理体制の見直しや技術開発などを進めていくことが求められる。
1~3号機には現在、計880トンものデブリが残る。今回、採取に成功したデブリはほんのひとかけらで、重さは0・7グラムにすぎず、デブリ全体の特性を反映しているかどうか明らかではない。
茨城県の研究機関に送られ、組成や硬さなどが分析される。結果は、デブリ取り出し工法の決定や収納容器の設計に生かされる。量や質が十分でない場合は、再度のサンプル採取も検討すべきだ。
デブリの本格的な取り出しは、建屋全体を水没させる「冠水工法」、 充填 材で固めたうえで掘削する「充填固化工法」など異なる工法が検討されている。いずれも今回の試験的採取よりはるかに大がかりとなり、難度も高い。
政府は2051年の廃炉完了を目標としているが、既に当初計画より3年遅れている。いずれ計画を見直すことが避けられなくなるのではないか。その場合、必要となるコストや影響について、十分に説明することが不可欠だ。
東電は、まずは最大限の努力を尽くし、本格的な取り出しに向けた準備を整える必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月13日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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